老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
~「長引く咳」の漢方治療・養生法~
・風邪は治ったのに咳だけが残る
・風邪を引いているわけではないのに、咳が出る。
・慢性的に咳が続いている。
・咳はひどくはないが、咽喉の違和感がある。
などの症状でお困りの方はいらっしゃいませんか?
中国は日本に比べて空気が悪く、咽喉の慢性的な炎症を起こしてしまっている方も少なくないようです。
風邪などの急性の感染症が原因で起こる咳と、長引く咳では治療方法が違います。
長引く咳の原因と治療方法は大きく分けて4つあります。
① 空咳
② 痰が多く出る咳
③ 力のない咳が出る
④ ストレスで悪化する咳
【長引く咳の分類別治療法】
① 【空咳】
特徴:痰がほとんどない。鼻や咽喉の粘膜も乾燥しがち。
呼吸器が乾燥していることにより、刺激に敏感になり、咳が出るタイプ。
治療:咳を止める+肺の働きを整える+呼吸器系を潤す
養生:×辛い食べ物:呼吸器の乾燥を悪化させ、刺激となります。避けましょう。
〇梨やクワイなど:呼吸器に潤いを与えます。
②【痰が多く出る咳】
特徴:白~透明な痰、痰を吐き出すと咳が止まる。
痰や鼻水などが咽喉に絡まることにより、咳が出るタイプ。
治療:水分の代謝を調節する+痰を減らす+咳を止める
養生:×甘いもの、脂っこいもの、味の濃いもの
これらは、いずれも胃腸に負担をかける食べ物です。
胃腸の働きが悪くなったり、呼吸器や身体が冷えたりすると水分代謝が影響を
受け、分泌液が多く出やすくなります。
〇ミカンの皮やヘチマなど:身体の余分な水分を排泄する働きがあります。
※黄色い痰が多い場合は、炎症があったり、身体に熱がこもっていたりすると考えられるので、治療に使う生薬を調節します。
③【力のない咳】
特徴:抵抗力が弱く、風邪を引きやすくなかなか治らないことが多い。
咳が続いていることにより、さらに体力を奪われることが多い。
治療:肺の働きを高める+身体に元気を補う
養生:×疲労、睡眠不足:体力と抵抗力が弱まり、咳が悪化しやすい
〇山芋や麦芽糖など:胃腸の調子を整えることで、食事の吸収力を高め、抵抗
力を高める働きがあります。
④【ストレスで悪化する咳】
特徴:ストレスにより悪化する。胸が詰まって苦しい感覚があることもある。
治療:気持ちをリラックスさせる+痰を減らす+咳を止める
養生:×ストレス:ストレスにより「気」※の巡りが悪くなり、咳が悪化しやすくな
ります。
〇運動、紫蘇、香味野菜など:「気血」を動かす働きがあります。
※「気」とはエネルギーやものを動かす力、抵抗力などなどのことです。この「気」が絶え間なく体中を動いていることにより、人の身体の機能が正常に維持されると考えられています。
【呼吸器科の老中医の診察室】
施紅 先生
上海在住のAさん、もともとアレルギーもあり、風邪も引きやすい体質でした。空気の悪い日に咳が出るようになり、咳が出ると西洋の病院へ行き、吸入をしたり西洋の薬を服用したりしていましたが、服用をやめるとまたすぐ咳が出るというのを繰り返していました。
今回は風邪を引いた後の咳が止まらず、当クリニックを受診されました。
診察の結果、Aさんは呼吸器の抵抗力が弱く(肺気虚)アレルギーもあり咽喉が敏感で刺激を受けやすい状態であると施先生は判断しました。
呼吸器の抵抗力が弱い方は、風邪を引きやすく、その後の症状の回復も遅い方が多く見られます。
先生は咳を止める生薬の他に、身体の抵抗力を高める生薬をメインで使用し、炎症やアレルギー症状を抑える生薬を補佐的に使用しました。
先生からは、胃腸に負担がかかるものやお酒、辛いものは控えるように指導がありました。
咳の他に、疲れやすい、身体がだるいなどの症状があり、咳が治まった後もしばらく漢方の服用を続けました。
現在は風邪を引くことは減り、引いてもすぐに治るようになりました。
空気が悪い日は咽喉に痰が少し絡まりますが、咳の発作は出なくなりました。
★保険についてのご質問、漢方ってどうやって飲むの?苦い?
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2015年12月22日