中医学の知ってて得する(Wechat配信)記事
残暑の時期に下痢になりやすい人へ! 9月の薬膳養生料理レシピ
中国4千年の「中医学(漢方医学)」の理論をベースに、中医学ドクターが季節に応じた薬膳料理レシピをお伝えする「カンタン!薬膳料理」シリーズ第七弾!
9月、今回の薬膳料理レシピは、この時期に多い「下痢」になった時の「胃腸の回復!」がテーマです。
残暑が続くこの時期に多い症状に「下痢」があります。中医学では「泄瀉(せっしゃ)」といいますが、特にこの時期は、もともと脾気虚(胃腸が弱い)体質で、下痢が長引いて慢性化している状態の方が多くいらっしゃいます。この場合の下痢の原因は、慢性的な疲労に加え、胃腸に水分が停滞しているためと考え、治療には胃腸の動きを改善し、湿気を取ってくれる漢方を処方しますが、今回は、そのような方への薬膳養生料理をご紹介します。
胃腸を養い下痢を緩和する、薬膳料理で残暑を乗り切ろう!
「薬膳」と聞くとてもハードルが高いイメージがありますが、季節や体質・体調を考慮して、ふだんからの食材の特性や組み合わせ流ことも、立派な「薬膳」料理です。
難しい材料を使わず、普段の食材の組み合わせを工夫するだけで、いつもの食材が「薬 膳」に!
さあ、「胃腸を養う食材」を使って「下痢」対策をしましょう!
胃腸の回復のための「薬膳養生」レシピ
「芡実(けんじつ)とホタテ貝柱の粥」
調理時間: 20分
材料 2~3人前
芡実(けんじつ)・・・50g
ホタテ貝柱・・・3個
山芋・・・1/3 本
★ヨクイニン(はと麦)ご飯➡ お茶椀2杯分
水菜・・・1株
塩・・・小さじ1
水・・・600cc(貝柱を戻した水も加えて600cc にします)
【下ごしらえ】
★芡実は前日の夜に、水につけておきます。
★ホタテ貝柱は、前日から水に浸しておきます。貝柱を戻した水も使うので捨てないでくださいね。
★ヨクイニンとお米は前日の夜に、お米1合+ヨクイニン20gに、お米1合分のお水を入れて一晩寝かせておきます。翌日の朝に、炊飯器で普通炊きして作っておきます。
ヨクイニンのご飯は以前紹介したこちらのレシピでも使っています。参考にしてください。
【作り方】
1. ホタテ貝柱は手でちぎって細かくしておきます。水菜はみじん切りに、山芋は一口大に切ります。
2. 芡実とヨクイニンご飯に、ホタテ貝柱の戻し汁と水で合計600ccを加え、最初は強火で沸騰したら弱火にして、10分煮ます。。
3.2にホタテと山芋を加えて、更に10 分煮ます。
4. 山芋が柔らかくなったら、最後に水菜と塩を加えます。
5. 出来上がり!きれいに盛り付けましょう!
古川先生による「胃腸回復」のための薬膳食材講座
今回、レシピ監修をされた古川先生に、胃腸回復に役立つ食材を教えてもらいました。
山芋
「山芋」は、漢方処方でよく使用される六味黄丸の生薬のひとつです。喉の渇きを抑え、多尿を緩和する作用があるため、血糖値が気になる人にお勧めの食材になります。また、「腎と脾」を健康にする作用があるので、食が細く元気のない人は、積極的に摂取してほしい食材です。
芡実(けんじつ)
芡実はスイレン科オニバスの成熟種子で、本草学の古い書籍の<神農本草経>にも腰膝の痛みをやわらげ、精気を養い、耳や目の疲労を回復させると記述されています。また芡実は胃腸を養い、下痢をおさめ、夏の暑邪を解放し、酒毒を排泄する働きがあるので、残暑にお酒の飲み過ぎで、身体が重だるい人にも良い食材です。
ホタテ貝柱
貝柱は栄養のバランスもよく、中医学的には身体に「潤いを与え、血を補い、胃を強くする」作用があると言われています。また陰を補う効果もあるので、喉が渇きやすい人や、夜眠れない人に効果的な食材でもあります。そのほか、血を養い補腎効果もあるので、頻尿の方にもお勧めの食材です。
水菜
水菜は京都が原産地とされ「京菜」とも呼ばれています。今では上海でも手軽に購入できる野菜の一つで、ビタミンA も豊富なので皮膚や粘膜を丈夫にしたり、免疫力を強化したりする働きがあります。またカリウムも多く含まれているため、夏場で失われたミネラルを補充するためにもこの季節にはお勧めの食材です。
ドクターからの一言
夏場は、暑さにより身体の体液(水分)を消耗してしまいますが、特に「下痢」をしやすいひとは、更に身体の潤いが無くなってしまいます。また、その状態でそのまま養生せずに秋を迎えると、秋特有の「燥邪」が体を襲い、体調を崩す原因となります。
今、この時期に「喉の渇きや痛み、空咳、皮膚の乾燥、不眠、情緒不安定」などの症状が出ている方は、「燥邪」が身体に影響を与えていると考えられます。
今回ご紹介した「芡実」は、この「燥邪」が現れる9 月の季節の変わり目に、積極的に摂取して欲しい薬膳食材です。日本をはじめ、世界で未だCOVIT-19 が猛威を振るうこの時期、免疫力を落とさないよう、積極的に養生しましょう。
今回、レシピ監修をされた古川先生の診察は、黄浦クリニックと虹梅路クリニックで、夜20:00まで受けられます。
★保険についてのご質問や、どの先生に診てもらえばいいどの?漢方薬は苦い の?など、なんでもご質問ください!
- 中医学の知ってて得する(Wechat配信)記事
- 2021年09月06日
たかが《冷え》だと思っていませんか? 今のうちに漢方で「足冷え」を改善!
こんな症状でお悩みの方は、今すぐ相談
私にお任せください!
「男性の足冷え」は「心陽不足」が原因?
女性に「更年期」があるように、男性にも 30 歳後半から「心陽不足」で「動 悸・胸が苦しい・汗が出る・疲れやすい・精神力の低下」などの症状が出ること があります。これは、男女ともにホルモン分泌の低下や、自律神経の乱れが原因 で起こると考えられ、またこのような症状の初期の段階では、末端の血流循環不 全により「足冷えや浮腫み」などの症状が出てくることが多いようです。
漢方の「足冷え」治療
漢方では「足冷え」の症状や体質を診て、タイプ別に治療していきます!
①心陽不足タイプ
「心」の働きが弱まっていることが原因で、手足の血流 が悪い状態。足が冷えやすく浮腫みが出ることもあります。また、疲れやすく汗が出やすくなり、睡眠の質も低 下し動悸が現れることも。
【漢方治療】
身体の「陽気」を補う生薬で、「心」の機能回復をはかります。
②心脾両虚タイプ
胃腸が弱く栄養が吸収されないことが原因で、血が足りなくなるタイプ。手足の末端まで血液が流れないた め「足冷え」になります。また、同時に不眠になる事 も。
【漢方治療】
身体に血を補い睡眠の質を改善し、心臓に栄養を与える生薬で、機能回復をはかります。
③肝鬱血虚タイプ
慢性的な緊張が原因で、毛細血管が収縮しやすく血流障 害を起こしているタイプ。冷えて脚がつることもありま す。このタイプは真面目な性格の人に多く、緊張や不安な感情があると甘い物を欲する傾向にあります。
【漢方治療】
身体の緊張を緩和する生薬と血流改善の生薬を中心に処方し、運動や鍼治療などを組み合わせ治療していきます。
④腎陽虚タイプ
身体全体の水の代謝機能が低下することが原因で、冷えを引き起こしてしまうタイプ。下半身の浮腫みもあ り、排尿も以前よりはスムーズではなく、「前立腺が 肥大ぎみ」と診断を受けている人もいます。
【漢方治療】
「腎陽」を補う生薬を処方し、下半身の血流を促進させ症状を緩和させます。
ー実際の治療例ー
古川先生による実際の治療例を紹介します。
【対象者】
TSさん 55歳 男性
【症状】
【初診の時の状態】
患者さんは、夏場でも下半身が冷えやすくなってきている状態で、最近は毎日、 蕁麻疹が現れ、抗アレルギー剤を服用すると緩和する状態が続いていた。薬のせいか日中の眠気が強く、精神的に憂鬱な時もあり、原因不明の蕁麻疹と足の冷えなど、身体全体のバランスを改善したくて当院に受診されました。
【中医学的診察】
①問診
問診をしてみると、上半身は冷えないが下半身に冷えを感じやすく、会社の空調も強くコントロールが難しいとのこと。また、身体がだるくなりやすく、発疹の 発症箇所は、いろいろと変わる移動性発疹であることがわかった。温度による影響はないので、寒冷蕁麻疹ではないようです。飲酒とお肉を食べる習慣が多く、 野菜の摂取量は比較的少ないとのこと。50 代になって、入眠はいいのだが遅い時間に寝たとしても、5時前には目が覚めてしまい、その後再度寝ることは出来ないそうです。
②舌診
舌淡白、やや浮腫み 淡く黄色い濁った苔がある
③脈診
右は滑るような脈、左は細く弱い脈
【医師の診察】
お酒とお肉の摂取量が多いため胃腸の働きが疲弊し「湿熱毒」が身体に多く溜まっている状態。また、逆に血の生成も減り、心臓と肝臓を養えない状態のようです。
50代から慢性的に睡眠の質の低下が持続していたと考えられ、更に「心の陽気」が減ったことが原因で、手足を暖められなくなったと考えられます。移動性の発疹は、東洋医学では「風邪(かんじゃ)」に関係していると判断。「風邪」には「外風」と「内風」があり、患者の蕁麻疹の原因は「血虚生風」であり、身体の中から吹く風「内風」のためと判断しました。
【漢方治療】
初めに老廃物である「湿熱毒」を排泄し、胃腸の働きを調節し、血の生成を正常にしていきます。六安煎に去風解毒の生薬を加味して処方。次に心臓と肝臓に血を補い、機能の回復をはかります。また、最後に蕁麻疹の原因である「血虚生 風」も、血を補うことで解決される事もあると説明しました。
【途中経過】
1か月後
スッキリと排便出来るようになり、お腹の重だるさが改善され苔も薄くなってきた。生薬を飲むと、下半身が暖まる感じがするとのこと。
2か月後
蕁麻疹が減り、抗アレルギー剤の服用回数も減ってきた。日中の眠気が改善され、 仕事のパフォーマンスが向上、憂鬱な感情も減りだした。飲酒の機会が増えたため、舌の苔がまた汚れてきた。
3か月後
胃腸の働きも改善がみられ血の生成も正常になり始めているため、心臓と肝臓に血を補い、機能の回復をはかる「養心湯」の処方を始める。
4か月後
下半身の冷えや浮腫みにも改善が見られる。しかしお腹の張りが出てくるようになる。養心湯の中には薬用人参があり、胃腸の働きが弱いとお腹が張りやすくなるため、薬用人参の量を減らして調整。
6か月後
身体の冷える季節になってきたが、漢方を服用してから身体が温まり寒さを感じにくくなってきた。飲酒量が増えるとまれに蕁麻疹がでるが、その時は抗アレルギー剤を服用し対応しているが、飲酒がない時は蕁麻疹も出ないので、以前のように毎日服用することは無くなった。これから寒い季節になるため、養心湯に暖かい生薬を加味し、2ヶ月分の漢方を処方し治療終了となりました。
【医師からの一言】
★保険についてのご質問や、治療期間はどのくらいかかるの?漢方薬は苦いの?
など、なんでもご質問ください!
- 中医学の知ってて得する(Wechat配信)記事
- 2021年08月30日
【古川先生の診察を取材】遠方在住でも大丈夫!繰り返す蕁麻疹(じんましん)を漢方で治療!
Aさんは現在北京にお住まいですが、2~3ヶ月に一度ほどのペースで上海にいらっしゃる機会があるそうです。
今回は上海に来たタイミングで、こちらのクリニックに来院され、診察を受けることができました。直接診察を受けることが難しい方はオンラインでの無料相談も行っていますのでご相談ください。
今回Aさんが蕁麻疹(じんましん)の相談をした古川先生は、このような先生です。
いよいよ問診スタート!
Aさんは、暖かくなるとともに、抗アレルギー剤を1日2回飲まないと赤みと痒みが 引かない状態になってしまったそう。そのせいか、薬の副作用で眠気、だるさがでてしまい、日中の仕事に支障をきたすとのことでした。
IgEとはIgE 抗体のことで、この総量が多いほど、アレルギー反応が起こりやすくなります。さらに何に反応するかが判明すれば、原因が特定されますが、Aさんの場合は、判断がつかなかったようです。
強い眠気が出るため、Aさんは極力薬を飲みたくないそうなのですが、痒みが我慢できず、 結果1日2回ほどもアレルギーを抑える薬(抗アレルギー剤)を飲んでしまうとのこと。
この後も、汗はかきやすいか、鼻水や鼻づまり、喉の異物感があるか、よく眠れているか、お腹が冷えるか、食欲はあるか、便通はどうか、辛いものは好きか、のどが乾くかなど、 一見蕁麻疹とどう関係があるのか少々わかりにくい問診を、時間をかけて行っていました。
次は舌の色と状態を診ていきます
次に、舌を診る「舌診」を行います。
Aさんの舌を診た古川先生は、白く厚い苔が付いていることを指摘しました。
次に脈を診ていきます
左右両方の手首から脈を診る古川先生。
古川先生は脈を診て次のように診断しました。
左の脈が弱い
→心臓と肝臓の血が足りておらず、栄養不足。そのため末端(皮膚)まで栄養がいきわたらず、蕁麻疹が出てきているのではないか。
右の脈は強い
→食欲が非常にある状態。しかし、消化吸収が追いついておらず、舌に苔、そして皮膚に蕁麻疹が出やすくなっているのではないか。
問診からも色々とわかることが…
古川先生は、先ほどの問診から、他にもいくつか気になる点を指摘しました。
一見すると蕁麻疹とは関係ないような質問からでも、古川先生はその断片を集めて原因を考察していきます。
最後に漢方を処方します
診察の結果…
漢方薬はこのように小袋に分かれており、全て混ぜた上、お湯に溶かせるので、非常に簡単に数種類が一度に服用できます。
次回の来院は?
今回は初診ということで、じっくりと1時間ほどかけて診察をしたAさん。約1か月分の漢方薬を処方され、持ち帰りました。しかしAさんは現在北京にお住まいのため、 次回はいつ来院できるかわかりません。
そんな時でも大丈夫!
Aさんがクリニックに足を運んだ3週間ほど後に、Aさんは古川先生とビデオ通話で現在の様子を確認。
Aさんは、漢方薬をしっかりと服用すると同時に、食物繊維を多めにとる、お酒、辛いものは控えめになどのライフスタイルにも気を付けているようです。
その結果、蕁麻疹は減り、1日に2回も飲んでいた薬(抗アレルギー剤)は、2~3日に1回程度で良くなり、お腹の張りも取れてきたそうです。
順調にいっており安心する古川先生
ただ、3ヶ月ほどで治療を終わらせたいと考えていたAさんでしたが、舌の苔がまだ多いため、半年は続けないといけないだろうと推察する先生。慢性化してしまうと、根気よくじっくりと治療することが大事だと言います。長い方では1年半ほどかかるそう。
そのうちに蕁麻疹の薬(抗アレルギー剤)の量がさらに減っていき、その結果少量でも効果が出るという好循環になります。
次回上海に来られる際にまた、クリニックに立ち寄ってもらうことになりました。
取材してみて
筆者は大人になってから蕁麻疹は出たことがないが、慢性化すると非常につらく、薬なしでは生活できないとも聞く。ひどくなると痒みで夜も眠れないとか。
しかし抗アレルギー剤に頼ってしまうと、今度は眠気やだるさで日常生活に差し支えてしまう。非常に厄介だ。
検査などですぐに根本的な原因がわかれば話は早いが、今回のAさんのように、原因がわからないままひどくなる症例もたくさんあるそうだ。
古川先生は、問診をして小さな事象も見逃さず、丁寧に原因を探っていく。その中にはヒントが必ず転がっており、そのヒントを元に漢方を処方していく。
漢方治療中も何度も話を聞き、漢方の種類や量を微調整する。結果、一時的に症状が軽くなるのではなく、根本治療の成功に向かうのだという。
今回もまた、東洋医学の奥深さに触れることになった。
今回、相談を行った古川先生の診察は、黄浦クリニックと虹梅路クリニックで、夜20:00まで受けられます。
また、土曜日でも診察治療が可能なので、仕事の後や昼間の忙しさの後でもご連絡いただけます!
- 中医学の知ってて得する(Wechat配信)記事
- 2021年08月23日
< Previous Page | Next Page > |