老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
〜「不妊症」の漢方治療・養生法〜
子供が欲しいけれどもなかなかできない、という夫婦は昔に比べて増えてきています。
生理周期が乱れている方、生理痛のある方、冷え症、疲れやすい方、ストレスのある方は要注意!
西洋の検査では何も問題がないという方でも、中医学の観点から見ると問題を抱えている、という方は少なくありません。
また、不妊症の原因の約半数は男性側にもあるという統計結果があります。
上海駐在の男性は仕事が忙しく、疲れが溜まっている方も多く見られます。
ご夫婦で一度中医学の観点から体調をチェックしてみてはいかがでしょうか?
【不妊症の原因となる主な要因(中医学)】
・血流が悪い【血瘀】
・エネルギーや血液が少ない【気虚、血虚】
・生殖器系の働きが弱い【腎虚】
・「気」の巡りが悪い【気滞】
・老廃物の排泄が滞っている【痰湿】
※不妊症の原因は単純ではなく、いくつかの要因が絡み合っていることが多いです。
診察では、それぞれの程度を把握して治療を進めていきます。
【不妊症の分類別治療法】
① 【血瘀】(けつお)血流が悪い
特徴:ホルモンや栄養、酸素などは主に血液によって子宮や卵巣に与えられます。
血流が悪いとこれらがしっかりと与えられず、いらない老廃物等の回収も
スムーズにいきません。 また、血流が悪いと月経の際に子宮の内膜がスム
ーズに排泄されにくく、生理痛が起きやすくなります。生理の血に塊が混
じることもあります。また、肩こりや腰痛など身体のあちこちの痛みも起
きやすくなります。
治療:血流を改善する+血流を悪化させている原因を改善する 血流が悪くなる原
因は、冷えやストレス、血液を動かすエネルギーが足りないなど様々です。
原因に応じて生薬を組み合わせて治療をします。
養生:×冷え、ストレス、睡眠不足
〇温める、運動、黒きくらげ、玄米、タマネギなど
②【気虚、血虚】エネルギーや血液が足りない
特徴:エネルギーが足りない場合は、疲れやすい、生理がすっきり終わらずダラダ
ラと少量の出血が続くなどの症状が起きやすくなります。 血液が足りない場
合は、生理の血が少なくなる、顔色が白っぽくなる、貧血などの症状が起き
やすくなります。また、子宮や卵巣に行きわたる血液も少なくなるので、機
能も低下しがちです。
治療:エネルギーと血液を作り出すためには、胃腸の吸収力をしっかり高めることも
必要です。エネルギーや血液を補う+胃腸の吸収力を高める。
養生:×疲労、睡眠不足、悩みごと、食事制限などのダイエット、胃に負担のかかる
食べ物
〇消化の良い食べ物、イモ類、なつめ、黒米、ほうれん草など
③【腎虚】生殖器系の働きが悪い
特徴:排卵までに時間がかかる、生理周期が長いまたは短い、基礎体温が二層になら
ない、腰から下がだるかったり冷えたりするなどの症状 中医学では生殖器系や
成長発育、若さなどを司る臓器を「腎」と呼びます。 「腎」が弱るとホルモン
バランスが崩れやすくなる他、老化の症状が見られやすくなります。 「腎」に
は身体全体の潤いと関係のある「腎陰」と、身体全体の温かさの元と関係のあ
る「腎陽」とがあります。どちらが不足しているかによって、生薬を使い分け
て治療をします。
治療:「腎」の働きを補う
+排卵までに時間がかかる、ほてりや咽喉の渇きがあるなどの場合は「腎陰」
を補う
+高温期が不安定、下半身の冷えなどがある場合は「腎陽」を補う
④【気滞】「気」の巡りが悪い
特徴:ストレスやイライラがあると、「気」の巡りが悪くなります。 中医学で言う
「気」というのはエネルギーや自律神経の働きの他、臓器の働きや、物を動か
す力、免疫などとも関係のあるものだと言われています。 「気」の巡りが悪く
なることにより、ホルモンの伝達や神経伝達などがスムーズにいかなくなると
、各臓器を始め、生殖器系の働きにも影響が出てきます。基礎体温が安定しな
かったり、生理の前に胸が張って痛くなりやすくなったりします。
治療:「気」の巡りをスムーズにする+影響が出ている臓器の働きの調節「気」の巡
りが悪くなると、二次的に血流が悪くなったり、いらない水の排泄が滞ったり
することがあります。症状が出ている場合は血流の改善や水分代謝の改善の治
療も同時に行います。
養生:×ストレス、緊張
〇軽い運動、香味野菜、柑橘類など
⑤ 【痰湿】老廃物の排泄が滞っている
特徴:太っている、むくみがひどい、おりものが多いなど 身体の中にある不要でどろ
っとした液体状のものを中医学では「痰湿(たんしつ)」と呼びます。 「痰
湿」は身体のあちこちに溜まり、エネルギーや血液が正常に循環したり活動し
たりするのを邪魔するので、身体の機能も停滞しやすく、身体も重だるくなり
がちです。
治療:「痰湿」を取り除く+「痰湿」ができる原因を治療する
「痰湿」は胃腸や呼吸器系の働きが悪かったり、「気」や「血」の循環が悪か
ったり、冷えたりした際に身体の中に溜まり、排泄が滞ると考えられています
。原因に応じて治療をします。
養生:×脂っこいもの、味の濃いもの、甘いもの
〇運動、ミカンの皮、冬瓜、春雨など
【婦人科の老中医の診察室】
劉愛武先生
結婚1年目のAさん、結婚当初から子供を希望されていました。半年前から排卵チェックを始め、タイミングを取っていましたが妊娠に至りませんでした。仕事のストレスもあり、3カ月ほど前から月経周期が乱れ、排卵までの期間が極端に長くなり生理が40日以上来なかったり、高温期がはっきりしない周期が続いたりしたため、まずは生理不順を治したいということで来院されました。
診察の結果、Aさんはもともと体力があまりなく、仕事のストレスが加わったことで生理周期が乱れたと劉先生は判断しました。
女性の場合、生理の周期によってホルモンのバランスが異なります。ホルモンのバランスが乱れている場合、体質に合わせた治療の他に生理の周期に合わせた治療が必要な場合があります。
劉先生は、胃腸の吸収力を高め元気を補う生薬と「気」の巡りを良くする生薬に加えて、生理の周期に合わせて生薬を使い分けて治療をしました。
先生からは疲労を避けリラックスを心がけるようにという指導がありました。
もともと疲れやすく、日中も眠いことが多かったAさんでしたが、漢方を服用し始めてからは疲れにくくなり、日中の眠気も改善してきました。安定しなかった基礎体温もきれいになり、生理周期が整ってきた矢先に妊娠が発覚しました。
★保険についてのご質問、漢方ってどうやって飲むの?苦い?
どの先生に診てもらえばいい?などなんでもご質問ください
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2016年01月12日