老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
～「慢性鼻炎」の漢方治療・養生法～
慢性の鼻炎がある人は、大人でも子供でも虚弱タイプの人が多く、皮膚炎や喘息、腎臓疾患や心臓疾患なども起こしやすい傾向にあります。中医学で鼻炎をスッキリ治すと共に積極的に免疫力UPを目指しましょう。
【慢性鼻炎の主なタイプ（中医学）】
・早朝やお風呂の後、温度差で鼻水が出る
・鼻づまりと共に便秘や肌の乾燥もある
・鼻水が咽喉に流れ咳も出る
・鼻水が濁り激しい頭痛もある
・鼻が詰まり臭いがわからない
【慢性鼻炎の分類別治療法】
① 温度差で鼻水が出る
特徴：冷たい風や早朝、お風呂の後などの温度変化に過敏に反応しがちです。時間が
たつと鼻水が止まることが多いです。抵抗力が弱く汗をかきやすい虚弱タイプ
に多く見られます。
治療：身体の陰陽（温度差）を調節する+胃腸を調え免疫力をつける
養生：×生魚、アイスクリーム、お酒：血管が収縮したり拡張したりしやすい食材は
避けましょう。
〇生姜、ナツメ、梅干しなど：身体の過敏性を軽減する食材です。
② 鼻詰まりと共に便秘や肌の乾燥がある
特徴：鼻が詰まり口で呼吸をするため、身体の水分が蒸発しやすく、便秘や皮膚が乾
燥しやすい人が多いです。
治療：鼻の通りを良くする+肺を潤わせ便通を良くする+鼻のマッサージをする
養生：×唐辛子、タバコなど：身体を乾燥させる食材は避けましょう。
〇アーモンド、クルミ、ミント：身体を潤し滋養する食材です。
③ 鼻水がのどに流れる（後鼻漏）
特徴：慢性の鼻炎の人や姿勢の悪い人に多く見られます。咽頭炎や気管支炎などにも
なりやすく、咳が長引く事もあります。
治療：鼻水を減らし、骨格を強くする処方+運動療法
養生：×甘いもの、冷たいもの：身体の水分代謝が悪くなり、鼻水が増えやすくなり
ます。
〇黒豆、ハスの実、レンコン：身体の水分代謝を改善し、鼻水の減少が期待で
きる食材です。
④ 鼻水が濁る
特徴：太っている人、むくみやすい人などは、中医学的に痰湿（老廃物）が多く体内
にあるため炎症も起こしやすくなります。また、抵抗力も弱く疲れると風邪を
ひき易くなり大量の濁った鼻水が出やすくなります。
治療：清熱解毒（消炎）、鎮痛の生薬、老廃物を排泄する処方+運動
養生：×バターやチーズ、砂糖、お肉：痰湿（老廃物）が溜まりやすい食材で
す。
〇セロリ、ゴボウ、菊花、ハスの葉：老廃物を排泄する働きがあり、鼻にも良
い食材です。
⑤ 鼻が詰まり臭いがわからない
特徴：慢性的に鼻炎を繰り返している人に多く見られます。また、血行が悪く神経の
栄養状態が良くない人にも多いです。
治療：抵抗力を回復し血行を改善する処方+針治療
養生：×お酒、たばこ、唐辛子：身体が乾燥してしまうため、症状の改善にはよくあ
りません。
〇昆布、ニラ、クワイ：浮腫みを抑え、血流を改善し解毒作用のある食材で
す。
【鼻炎の治療が得意な老中医の診察室】
施 建芳 先生
Kさんは昨年の年末に咽喉の炎症が起き、39度まで発熱して抗生剤を服用しました。発熱、咽喉の炎症は治まりましたが、その後鼻水の濁り、頭痛、のぼせの症状を繰り返し、そのたびに抗生剤を服用して症状を抑えていました。今年になり濁る鼻水が増え、頭痛、のぼせ、集中力の低下、疲労倦怠、軟便、異臭を感じるため、当クリニックを診察されました。
Kさんは、上海に来てから外食する機会も多くなり1年間で10キロ体重が増えたそうです。睡眠時に、いびきをかくようになったと奥さんから指摘されていました。
診察の結果、Kさんは、暴飲暴食、体重の増加により体内の老廃物（痰湿濁）が増え、副鼻腔に細菌やウイルスが繁殖しやすい体質に変化したため、鼻と咽喉の炎症を繰り返していたと施先生は考えました。
施先生は、最初に炎症を抑える生薬と身体の老廃物を排泄する処方をしました。お薬を飲んだ後、濁った鼻水がたくさん出て、頭痛と異臭が改善されました。二回目の診察の際には鼻炎の症状はなくなり、疲労倦怠、のぼせ、軟便の症状がありました。施先生は老廃物（痰湿濁）が蓄積されていると考え、老廃物を排泄する生薬を処方し、食事の改善を提案しました。三回目の診察の際にも鼻炎の症状は無く、疲労などの症状も改善されてきました。更に、老廃物を排泄する処方に加え、運動による活動量UPの提案（1時間の散歩）をしました。治療開始から一カ月半でKさんの体重は3キロ減少し、疲労感やいびきも改善されました。
今回の治療のポイントは、病原体が繁殖しやすい体質の改善でした。Kさんは食事の改善や運動も積極的に行ったため、生薬の効果もよく、体重減にも成功し、治療期間も短縮できました。
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2016年02月28日
