老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
〜繰り返す下痢の漢方治療・養生法〜
胃腸炎や食中毒などとは別に、何度も下痢を繰り返したり、慢性的な下痢で悩んでいるという方は、体質だからとあきらめているケース多いようです。中医学では原因に対してのアプローチや、体質改善をすることで下痢を治療し、繰り返さないようにしていきます。
【繰り返す下痢の主なタイプ(中医学)】
① ストレスで悪化しやすい
② 雨が続いたり湿度が高くなったりすると悪化しやすい
③ お酒を飲んだり、脂っこいものを食べたりすると悪化しやすい
④ 明け方に腹痛があり、下痢をする
⑤ 食べ過ぎると下痢をする
⑥ 疲れたり、胃腸に負担のかかる食事をしたりすると下痢をしやす
い
※慢性の下痢にはいくつかの要因が絡み合っていることもあります。
診察では、それぞれの程度を把握して治療を進めていきます。
【繰り返す下痢の分類別治療法(中医学)】
① ストレスで悪化する下痢
特徴:試験やプレゼン、大事な会議など緊張をする場面が来たりストレスを感じたり
するとお腹の調子が悪くなるタイプです。お腹の痛みや食欲不振が起きたり、
ゲップやおならが多くなったりすることもあります。
治療:リラックスさせる+胃腸の働きを整える
養生:×緊張、悩みすぎ
〇柑橘系の果物、アロマ、リフレッシュできる軽い運動など
② 雨が続いたり、冷えたり、湿度が高くなったりすると悪化する
下痢
特徴:身体の中にいらない湿気や水が溜まることにより下痢が悪化するタイプで、腹
痛やお腹がゴロゴロ鳴り、水っぽい下痢が出やすいです。食欲が無くなったり
、吐き気がしたり、身体がだるくなったりすることもあります。
治療:身体の中のいらない湿気を排泄する+胃腸の働きを整える+胃腸を温める
養生:×冷たい飲食物、脂っこい食べ物
〇トウモロコシのひげ、カルダモン、きのこ類など
③ お酒を飲んだり、脂っこいものを食べたりすると悪化する下痢
特徴:身体の中のいらない湿気や水が熱を帯びることにより起きるタイプの下痢で、
便が出る際に肛門がヒリヒリしたり、便の臭いがきつくなることが多くあり
ます。その他、髪や顔がベタベタしやすかったり、身体がだるくなったり、
口臭や体臭がきつくなったりすることもあります。
治療:身体の中のいらない湿気と熱を排泄する+胃腸の働きを整える
養生:×お酒、脂っこい食べ物、唐辛子、味の濃いものなど
〇ハトムギ、緑豆、蓮の葉茶など
④ 明け方に腹痛があり、下痢をしやすい
特徴:「腎」が冷えることにより起きるタイプの下痢で、明け方に腹痛で目が覚めて
下痢をすることが多く、足腰に力が入りにくく、老人や身体の弱い方に多く見
られます。
※中医学で言う「腎」とは西洋医学の腎臓そのものではなく、身体全体の元気
や抵抗力、生殖器系や発育、若さを司る場所でもあり、身体を温める元でもあ
ると考えられています。「腎」は年齢や過度の疲労などで働きが悪くなります
。
治療:「腎」を温める+胃腸の働きを整える+いらない水や湿気の排泄を促す
養生:×過度の疲労、冷えなど
〇クルミ、ゴマ、栗など
⑤ 食べ過ぎると下痢をしやすい
特徴:食べたものがうまく消化されていないことが原因で起こるタイプの下痢です。
食べ過ぎるとお腹が張って痛くなり、下痢をして、便が出ると比較的すっき
りとするのが特徴です。
ゲップが良く出たり、便やおならから腐った卵のような臭いがすることもあり
ます。
治療:消化を助ける+胃腸の働きを整える+いらない水や湿気の排泄を促す
養生:×食べ過ぎ、飲みすぎ、消化の悪い食べ物
〇サンザシ、大根、麦芽など
⑥ 疲れたり、胃腸に負担のかかるものを食べたりすると下痢をしや
すい
特徴:もともと胃腸の調子があまり良くなく、疲れやすいタイプの方で、疲労や冷た
い食べ物、脂っこい食べ物などのせいでさらに胃腸に負担がかかると下痢が悪
化しやすくなるという特徴があります。
治療:胃腸の元気を補う+胃腸の働きを整える+いらない水や湿気の排泄を促す
養生:×疲労、冷たい食べ物、脂っこい食べ物など
〇白菜、キャベツ、トウモロコシなど
【下痢の治療が得意な老中医の診察室】
古川裕三 先生
Aさんは上海で働く男性です。3年前から下痢の症状で悩んでおり、一日に4~5回トイレに駆け込む状態でした。特に会議中にお腹が痛くなることが多く、最近は倦怠感も激しいため、当クリニックを受診されました。
診察の際に古川先生は、Aさんの下痢の症状の他に、消化機能の状態や飲食の習慣を詳しく確認しました。診察の結果、Aさんは仕事の関係もあって、長年お酒を飲み続けているため、消化機能が低下し、栄養分が吸収されないのに老廃物がうまく排泄されない状態になっており、排泄されるべき老廃物が身体に溜まっているため、倦怠感と疲労感が現れていると古川先生は判断しました。
治療は胃腸の働きを整え、老廃物を排泄する生薬とお腹を温め滋養する生薬を組み合わせて行いました。漢方薬を飲んでもらうと同時に、飲酒量を制限し、腸の刺激となる食べ物(油もの、生の海鮮、香辛料)を減らすように生活指導も行いました。その後、汗からも老廃物の排泄をするために歩く時間を増やすことを提案しました。
古川先生が処方をした漢方薬を飲み、生活を改善した結果、三週間後には会議中にトイレに駆け込むことがなくなり、六週間後には下痢が無くなり、便の回数も減りました。この頃から疲れやすさと倦怠感が軽くなり、日中の活動量も上昇して、睡眠の質も良くなりました。
三か月後には下痢の症状の改善だけではなく、お腹が冷える感覚もなくなり、治療終了となりました。
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2016年05月31日
〜「むくみ」の漢方治療・養生法〜
上海は日本に比べて湿気が強く、ジメジメ、ムシムシする日が続きがちです。
湿度が高いと身体の中にもいらない水が溜まりやすくなり、体調を崩しやすく、身体も重だるく、気分も晴れないことが多くなります。
日本人は他の人種に比べて湿度の影響を受けやすいと言われています。
西洋医学ではむくみには主に利尿剤を使いますが、中医学では原因ごとに治療方法が異なります。
※むくみの陰に病気が隠れていることもあります。症状が長く続いている方や程度のひどい方は中医師にご相談ください
【むくみの主なタイプ(中医学)】
① 下半身がむくみやすく、身体のだるさを感じ、胃腸の調子が悪い
② 顔がむくみやすく、寒気・発熱・咳などがある
③ 下半身から全身がむくみやすく、足腰のだるさがあり、冷えがある
④ 疲れるとむくみが起きやすく、元気がない、顔色が悪い、ふらつくなどがある
【むくみの分類別治療法】
① 半身がむくみやすく、身体のだるさを感じ、胃腸の調子が悪い
特徴:主に胃腸の働きが悪くなることにより、水の調節ができずに起きるタイプのむ
くみです。
中医学では胃腸が水の吸収と調節は胃腸がしていると考えています。胃腸の調
子が悪くなったり、胃腸に負担をかけるような食生活をすると、身体の中の水
分の吸収と排泄のバランスが崩れ、むくみや下痢、だるさなどが起きやすくな
ります。
治療:胃腸の調子を整える+水の分配を正常に戻す
養生:×甘いもの、脂っこいもの、冷たいもの
〇トウモロコシのひげ、ヘチマ、粟(アワ)のお粥など
② 顔がむくみやすく、寒気・発熱・咳などがある
特徴:主に呼吸器系の働きが悪くなることにより、水分を体中に行きわたらせ、排泄
させることができずに起きるむくみです。
中医学では「肺」が身体の水の散布と毛穴からの発散をしていると考えていま
す。風邪や冷えなどにより「肺」の働きが悪くなると、特に顔を中心にむくみ
が起きやすくなります。
治療:肺の機能を整える+いらない水を発散させる
養生:×薄着、風邪が悪化するような生活など
〇タマネギ、里芋、小豆など
③ 下半身から全身がむくみやすく、足腰のだるさがあり、
冷えがある
特徴:主に「腎」の働きが悪くなることにより起きるむくみです。
中医学では「腎」は膀胱と関係があり、水を排泄する他、足腰の強さを保った
り、身体の温かさを生み出す源でもある臓器だと考えています。
「腎」の働きが悪くなると、下半身からむくみが出始め、ひどくなると全身が
むくみます。足腰がだるく、冷えるのが特徴です。
治療:「腎」を温める+いらない水を排泄させる
養生: ×冷え、過労など
〇クルミ、ラム肉、シナモン、など
④ 疲れるとむくみが起きやすく、元気がない、顔色が悪い、
ふらつくなどがある
特徴:主にエネルギー不足と血液不足により起きるむくみです。
むくみの程度はひどくはなく、疲れるとむくんでくることが多く、元気がな
い、息切れがするなどのエネルギー不足の症状と、顔色が悪い、ふらつくな
どの血液不足の症状があります。
身体の水はエネルギー血液が十分にあることで正常に動き、不要な水を回収し
て排泄することができます。疲労や睡眠不足などで血液やエネルギーを消耗し
てしまったり、胃腸の調子が悪く、血液やエネルギーを作り出せなかったりす
る場合に起きやすくなります。
治療:「気」と「血」を補う
養生:×疲労、睡眠不足、悩みすぎ
〇山芋、ナツメ、よく煮込んだスープなど
【むくみの治療が得意な老中医の診察室】
施紅 先生
上海で働くAさんデスクワークが多く、冬やエアコンの効いた室内だとすぐに手足が冷えて、足がパンパンにむくむのが悩みで当クリニックを受診しました。
施先生は診察の際に症状を詳しく話を聞き、舌の状態を見て、手首の脈を触り、胃腸の調子は悪くないか、元気はあるかと質問をしました。
するとAさんは少し驚き、胃が痛くて食欲もなく、元気が出ない日が多いと答えました。
施先生は、Aさんは胃腸の調子が悪いことにより、身体の必要な水と不要な水をうまく調節することができない上に、栄養分の吸収もうまくできず、身体の中の水を動かすためのエネルギーと血液を作り出せないことによりむくみが起きていると考えました。さらに、エネルギーや血液が少ないことにより、血流も悪くて冷え、その冷えもさらにむくみを悪化させていると考えました。
施先生は、Aさんの胃腸の状態を改善させるために、主に胃腸の働きを整えいらない水を排泄させる生薬をメインに、身体を温める生薬と、血流を改善する生薬を補佐的に組み合わせて処方をしました。
そして、Aさんには軽い運動を毎日し、足湯をするか湯船に浸かるように、ストレスを溜めないように気を付け、胃に刺激となる辛いものや冷たいもの甘いものは控えるようにとアドバイスをしました。
Aさんは施先生のアドバイスに従いながら漢方薬を飲み続けたところ、胃の調子が良くなり、食欲も増し、手足が温かくなり、むくみが気にならなくなりました。
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2016年05月09日
~「腰痛」の漢方治療・養生法~
腰痛の悩みを抱えている方は少なくありません。
実は腰痛にも様々なタイプがあり、治療方法が異なります。
鍼治療や理学療法以外に、漢方薬が良く効くこともあります。
あなたの腰痛はどのタイプでしょうか?
【腰痛の主なタイプ】
① 急に激痛が走り、歩くこともままならない
② 一日中痛みがあり、痛くて夜も眠れない
③ 腰が硬くなり、下肢も痺れている
④ 朝起床時が一番痛く、身体を動かすと痛みが楽になる
⑤ 身体が硬く、腰の可動率が悪い
⑥ 疲れや冷えなどにより痛みが悪化する
【腰痛の分類別治療法】
① 急に激痛が走り、歩くこともままならない
② 一日中痛みがあり、痛くて夜も眠れない
治療方法:この二つのうちいずれかの症状がある場合は鍼治療がおすすめです。症状
の強さと状況により検査をおすすめします。
痛みのある局部の筋肉を弛緩させ、痛みを和らげる+鎮痛作用のあるツボ
を刺激する。
鍼治療には、痛みのある部分の血流を促し、炎症物質を早く排泄させた
り、血流を促して回復を促進する働きなどもあります。
養生方法:×柔らかいソファーや椅子、ベッド:腰痛を悪化させます
〇入浴、医師の指示の下行う軽いストレッチ、十分な睡眠など
③ 腰が硬くなり、下肢も痺れている
④ 朝起床時が一番痛く、身体を動かすと痛みが楽になる
⑤ 身体が硬く、腰の可動率が悪い
治療方法:この三つのうちいずれかの症状がある場合は理学療法がおすすめ。 症状の
強さと状況により検査をおすすめします。
筋肉をほぐす+歪んだ関節を調節する
関節の可動域を正常に戻し、バランスの取れた姿勢にします。
養生方法:×医療機関以外のマッサージ、激しい運動など
〇理学療法士の指導による関節の運動、ストレッチなど
⑥ 疲れや冷えなどにより痛みが悪化する
治療方法:漢方治療+理学療法または鍼治療
疲れによって筋肉が弛緩し、関節や骨に負担がかかったり、冷えで血流が
悪化したり筋肉がこわばることにより痛みが悪化するケースがあります。
理学療法や鍼治療と漢方治療を組み合わせて、疲れにくい身体や冷えを改
善することで痛みの改善を促すことができます。
養生方法:×疲労、冷え、睡眠不足など
〇軽い運動、バランスの取れた食事
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- 2016年03月31日
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