老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜

~「めまい」の漢方治療・養生法~

めまいは西洋医学の検査では特に問題がなく、原因不明と診断されることも多くあります。中医学では器質的に問題のないめまいにも様々な分類があり、それぞれ治療方法があります。

 

めまい画像

 

【めまいの分類(中医学)】

 

① 春にめまいがする

 

② 生理前後にめまいがする

 

③ 興奮して怒るとめまいがする

 

④ 胸が苦しくてめまいがする

 

⑤ 頭が重くぼんやりしてめまいがする

 

※上記以外にもめまいのタイプがあります。症状が出ている方は中医師に相談をしてください。

 

 

【めまいの分類別治療・養生法】

 

① 春にめまいがする

 

特徴:「肝」の働きが失調して季節の変化に対応できないタイプです。

   春は風が吹き、気温の変化が激しくなります。中医学では身体の中も季節によ

   って影響を受けると考えており、春は「肝」の働きが失調した症状が出やすい

   と考えています。

   中医学の「肝」は西洋医学の肝臓とは違います。「気(エネルギー)」を滞り

   なく巡らせたり、「血」を貯めておいて必要な場所に必要な分だけ分配したり

   、自律神経を調節したりする働きがあります。

   ストレスや過労などで「肝」の血を消耗したり、冬の間の不摂生で「肝」に熱

   が溜まっていたりすると「肝」の働きが失調しやすく、春の気候の変化に身体

   が対応できなくなり、めまいが起きやすくなります。

 

治療:肝血を補い、肝を養う、また冬に溜まった熱を、取り除く漢方を処方

 

養生:×唐辛子、コーヒー、筍など
   梅干し、百合根、菊茶など

 

 

② 生理前後などにめまいがする

 

特徴:気血不足によりめまいが起きているタイプです。

   生理によって血液が排出された後や、病気の後など、また、胃腸の働きが悪く

   血液やエネルギーを上手く作りだせない場合などにめまいが起きることがあり

   ます。

   このタイプは動くとめまいが悪化したり、疲労で悪化したりする傾向がありま

   す。

 

治療:胃腸を養い、気血を補い、出血を減らす漢方を処方

 

養生:×ローズティー、玉ねぎ、山査子など
   龍眼、トウモロコシ、山芋など

 

 

③ 興奮して怒るとめまいがする

 

特徴:「肝」の火が燃え上がりめまいが起きているタイプです。

   「肝」の失調の程度がひどいと、滞ったエネルギーが熱化したり、身体の上部

   に不調をきたしたりしやすくなります。興奮したり怒ったりするとこの「肝」

   の熱が燃えあがり、症状が悪化しやすくなります。

   このタイプは、めまいの他に耳鳴りや頭痛があったり、眼が充血していたり、

   顔が赤っぽかったり、イライラしやすい傾向にあります。

 

治療:体内の怒りの熱を鎮め、心を落ち着かせる漢方を処方

 

養生:×強いお酒、香辛料、牛肉など  
   セロリ、苦丁茶、ナツメなど

 

 

④ 胸が苦しくめまいがする

 

特徴:心の気(機能)が低下して、血液をスムーズに身体に供給することができず、血

   の流れが滞りめまいが起きることがあります。

 

治療:心電図の検査を受けた後、心臓を養う漢方の処方

 

養生:×栄養ドリンク、羊肉、アイスクリームなど
   銀杏、蓮の実、椎茸など

 

 

⑤ 頭が重くぼんやりしてめまいがする

 

特徴:身体の中に老廃物(痰湿)が溜まり、それによってめまいが起きているタイプ

   です。消化器系の働きが悪くなり、身体に必要な物と排出すべきものを分ける

   ことができないと起きやすくなります。

   このタイプは頭がずっしりと重く、霧がかかったようにぼんやりとして、胸が

   モヤモヤしたり、咽喉が詰まった感じがしたり、身体が重だるく動かしづらい

   傾向にあります。

 

治療:消化器系の働きを整え老廃物を排泄する処方

 

養生:×脂っこいもの、甘いもの、冷たいものなど
   ミカンの皮を乾燥させたもの、山芋、冬瓜など

 

 

【めまいの治療が得意な老中医の診察室】

 

古川裕三 先生

 

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Bさんは上海で働く50代の男性です。中国駐在1年が経った頃から中国人スタッフへの苛立ちが激しくなり、過度に逆上をした時にめまいが起き意識を失い倒れてしまったことがありました。Bさんは首肩の凝りが激しくなるとふらつきが出るため中医学で治療をしてほしいとのことで来院されました。

 

古川先生はまずBさんの表情や姿勢を見ながら質問をしていきました。Bさんは診察中ずっとイライラしており、疑心感を持っているようでした。古川先生は首肩の症状に対して時間をかけて説明をし、鍼治療をすることになりました。治療後、症状はやや改善しました。

 

二回目の診察時には、Bさんは少し表情が穏やかになっていましたが、部下の些細なミスでも気になりすぐに逆上してしまうと悩んでおり、また、毎日の飲酒量も増えていました。
Bさんはストレスを上手にコントロールできない状態にあり、「肝」の血を貯める働きが弱くなって「肝」の働きが失調し、些細なことで頭に血が上りめまいが起きていると古川先生は判断しました。また過度の飲酒習慣により肝機能も低下し、身体に湿熱が溜まり更に感情のコントロールがしにくくなり、ストレスと飲酒による悪循環の生活スタイルが形成されてしまっていると指摘しました。

 

治療は乾いた「肝」に「血」を満たし、心を穏やかにし、湿熱を取り除くことにより怒りの感情を調節する生薬を処方しました。また、漢方薬と同時に鍼治療を行い、滞った気血の巡りを改善させ、「肝」の経絡の通りを改善しました。さらに、飲酒量の制限を提案し、自分なりに目標を設定してもらうことにしました。

 

三回目の治療では笑顔が見られるようになり、緊張が改善されている様子でした。睡眠の質も良くなり、疲労感も減ってきたとのことでした。仕事中もめまいは無く、怒りの感情が減っていることを自分でも感じているとのことでした。

 

三カ月後、感情のコントロールが上手くできるようになり、逆上することはなくなりました。めまいの症状は現れていませんでした。

さらに三か月間治療を行い、症状が安定しているため治療終了となりました。

 

 


 

 

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