老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
〜「四十肩・五十肩」の治療法〜
中高年になると起きやすい肩周辺の痛みと動かしづらさを一般的に四十肩、五十肩と呼びます。関節付近に炎症が起きている状態で、正式には肩関節周囲炎と言い、筋肉の疲労で起きる肩こりとは別のものです。肩関節周囲炎は加齢により起きやすくなります。
【四十肩、五十肩の主な症状】
① 寝がえり、服の着脱時に肩が痛む
② 荷物を持つと肩に激しい痛みが走る
③ 腕が上がらす、顔を洗うのもつらい
④ 肩の痛みが激しく、痺れもあり眠れない
【四十肩、五十肩のタイプ別治療法】
① 寝がえり、服の着脱時に肩が痛む
特徴:年齢的な肩の柔軟性の低下や炎症があるタイプです。
治療方法:漢方薬で関節の血流や筋肉の弛緩を促し、鍼で痛みのコントロールをしていきます。
② 荷物を持つと、激しい痛みが走る
特徴:筋肉の硬直や炎症、頚椎症などを併発している可能性があるタイプです。
治療方法:頚椎症や神経痛の治療を中心に、患者に必要な治療をプランニングしていきます。
③ 腕が上がらず、顔を洗うのもつらい
特徴:肩の正常な可動域が制限され、食事や洗顔時にも痛みがあり生活に支障をきたしているタイプです。
治療方法:鍼で痛みを緩和し、消炎鎮痛剤を服用しながら、運動療法で肩関節の正常な可動域を取り戻します。
④ 肩の痛みも激しく、痺れもあり眠れない
特徴:靭帯の硬直や断絶、筋肉の炎症、神経痛などが考えられるタイプです。
治療方法:まずは検査をして肩痛の原因を探り、原因に沿って適切な治療方法を実施します。
【四十肩、五十肩の治療が得意な老中医の診察室】
張 齢元 先生
Aさんは上海に住む60歳の男性です。半年ほど前からなんとなく右肩が痛くなり、だんだん左肩にも痛みが出るようになりました。最近二カ月は痛みが悪化し、肩から上腕にかけて痛み、物を取る時、腕を伸ばす時、腕を上げる時に痛みで動きが制限されるほどになりました。睡眠時にも痛みがひどく、同じ姿勢をしばらく続けていると痛みが悪化してくるようになりました。
張先生は、Aさんの話を注意深く聞き、肩の状態と舌と手首の脈をチェックしました。Aさんは腕の付け根の辺りを押されると痛がり、腕を自分で動かす際も人に動かされる際も痛みがあり、動く範囲が狭まっていました。また、手首の脈が細く、押し込まないと触れない位置にあると張先生は指摘しました。脈が細いのは血液不足を表し、脈が深い位置にあるのは身体が冷えていることを表します。張先生が確認をすると、Aさんは寒がりであり、肩の痛みは温めると和らぐと話しました。
張先生はまずAさんの肩に鍼を打ち、さらに温熱療法をして肩を温めました。肩の鍼を外した後、今度は肩から遠い位置のツボを使って治療をしました。そして、きつい仕事や重いものを背負うことは避け、肩を冷やさないように、家でホットパックをするようにアドバイスをし、肩の運動を指導しました。
Aさんは初回の治療を受けた後すぐに肩の痛みが減り、腕を上げるのも楽になりました。その後治療を受けるたびに症状が軽くなってきています。
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2017年06月05日
〜「腰痛」の治療法〜 Part2
発症すると日常生活にも支障をきたす腰痛の悩み、検査をして原因が特定できる腰痛と、原因がはっきりしないものの痛みがある場合があります。
また内臓疾患により腰痛が出る場合もあるので注意が必要です。
【腰痛の主な分類】
① 椅子に座ると腰が痛む
② 朝起きる時に腰が痛む
③ ぎっくり腰
④ 腰が痛く痺れもある
※この他にも腰痛の分類があり、内臓疾患により腰の痛みが出る場合もあります。 症状がある方は医療機関を受診してください。
【腰痛の分類別治療法】
① 椅子に座ると腰が痛む
特徴:骨盤の位置が悪く腰の筋肉群が疲労しているタイプです。
また、腰や下半身のだるさを伴う場合は「腎」が衰えている可能性があります
。中医学の「腎」は腎臓そのものではなく、生命力や生殖器系、若さ、腰や下
肢の強さと関係が深いとされており、腰の痛みやだるさなどは「腎」の衰えと
関連づけられることがあります。
治療方法:骨盤調整をし、下半身を滋養する生薬を処方します。
② 朝起きる時に腰が痛む
特徴:睡眠を取っても、筋肉疲労が回復していないタイプです。
夜寝ている間は血流が悪くなりやすく、筋肉の疲労がある場合は血行不良が悪
化しやすく、疲労も回復しにくい傾向にあります。
治療方法:運動療法を実施し、疲労回復の生薬を処方します。
③ ぎっくり腰
特徴:重い荷物を持った時や急に屈んだりした時などに、急激な腰痛を引き起こし、
動けなくなるものです。
治療方法:鍼で緊張した筋肉をほぐし、関節を正常に動かすような施術をします。
④ 腰が痛く痺れもある
特徴:筋肉の炎症と、神経痛もあるタイプです。
背骨からは沢山の神経が出ています。この神経の通り道が圧迫されると痺れを
感じます。圧迫されている場所により痺れが出る場所が異なります。
治療方法:まずは検査をして腰痛の原因を探り、原因に沿って適切な治療方法を実施
します。
【腰痛の治療が得意な理学療法士の治療室】
王文卿 先生
Aさんは上海に住む30代の男性です。長年腰痛に悩み、腰椎の手術をしましたが、かえって痛みが悪化し、腰がこわばり、歩くのも大変な状態になっていました。
王先生はAさんの腰の状態を丁寧にチェックしていきました。腰を曲げられる角度や筋肉の状態などを確認し、腰の活動域がかなり狭まっていること、腰の筋肉が萎縮していることを指摘しました。
それから理学療法を始めました。まず、腰の活動域を回復させるトレーニングをした後、腰と背骨の手術後のこわばりをほぐし、そしてまた腰の筋肉の機能を高めるトレーニングをしました。また、足の筋肉伸ばし、歩く姿勢を補正しました。
王先生はAさんに家でのトレーニング方法を教え、毎日30分~45分ほど家でトレーニングをするように指導をしました。Aさんは王先生に言われた通りトレーニングを続けながら治療に通いました。
約二カ月の理学療法を経てAさんは腰の痛みが無くなり、腰の活動域も筋肉の機能も回復し、正常に歩くことができるようになり、治療終了となりました。
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2017年05月04日
〜「咳・喘息」の漢方治療・養生法〜
上海で生活をしている日本人の多くが心配をしている呼吸器系のトラブル、咳が出やすい方、喘息持ちの方は症状が悪化しやすい傾向にあります。
咳が続く方、喘息の方は環境や食生活を見直し、漢方薬で体質を改善することで症状が落ち着くことがあります。
【咳・喘息の症状の主なタイプ(中医学)】
① 黄色い痰が多く咳が出る
② 白い痰が多く咳が出る
③ 乾いた咳が夜に多く出る
④ 透明な鼻水が咽喉に流れ咳が出る
⑤ 動くと咳が出て呼吸が苦しい
※上記以外の咳・喘息のタイプもあります。症状がある方は中医師にご相談ください。
【咳・喘息の症状のタイプ別漢方治療・養生法】
① 黄色い痰が多く咳が出る
特徴:身体に湿った熱が溜まっているタイプです。感染症や炎症を起こしており、粘
り気のある黄色の痰が特徴で、熱っぽかったり、むせるように咳きこんだり、
胸が苦しかったりすることがあります。
治療:熱を冷まし解毒をする漢方と痰を排泄する漢方
養生:×お酒、揚げ物、ケーキなど
〇セロリ、ルッコラ、菊花など
② 白い痰が多く咳が出る
特徴:身体に湿が溜まっているタイプです。飲食物の不摂生や消化器系の働きが弱い
ことなどにより水分の運搬と排泄が滞り、痰となって咳を起こしやすくなりま
す。食欲が無かったり、お腹の調子が悪かったり、元気がなく疲れやすかった
りする人が多く、ジュクジュクするタイプのアトピーを併発していることもあ
ります。
治療:消化器系の働きを改善する漢方と痰を排泄する漢方
養生:×お酒、揚げ物、甘いものなど
〇ミカンの皮を乾燥させたもの、冬瓜、トウモロコシのヒゲ茶など
③ 乾いた咳が夜に多く出る
特徴:呼吸器系の潤いが減っているタイプです。痰は少なく、乾いた咳が特徴で、口
や咽喉の乾燥感があり、夜になると悪化する傾向があります。肌も潤いが無く
カサカサしていたり痒みが出たりすることもあります。
治療:肺に潤いを与える漢方
養生:×香辛料、羊肉、ミカンなど
〇梨、ユリ根、銀杏など
④ 透明な鼻水が咽喉に流れ咳が出る
特徴:肺の気が低下して免疫力が低下しているタイプです。白っぽい顔色をしてお
り、風邪を引きやすく治りにくく、気候が変化するとすぐに咳が出る傾向に
あります。
治療:気を補い、免疫力を調整する漢方と鍼治療
養生:×冷えたビール、アイスクリーム、海鮮など
〇梅干し、蓮の実、薬用人参など
⑤ 動くと咳が出て呼吸が苦しい
特徴:「腎」の機能が低下しているタイプです。中医学の「腎」は西洋医学の腎臓そ
のものではなく、生命力や若さ、生殖機能や水分代謝などと関係が深い臓だと
されています。また、肺が吸い込んだ気を身体の奥に引き込む(深い呼吸をす
る)るのも腎の働きによるものだと考えられています。
このタイプの方は慢性的に咳をしており、動いたり運動をしたりすると咳が悪
化し呼吸が苦しくなる傾向にあります。身体の機能が未成熟な子供や病人、老
人などに多く、子供の場合は成長と共に改善していくこともあります。
治療:「腎」を補い、身体を強くし、呼吸を深くする漢方
養生:×疲労、冷え、ハウスダストなど
〇クルミ、五味子茶、紫蘇の実など
【呼吸器科の老中医の診察室】
施紅 先生
上海在住のAさん、もともとアレルギーもあり、風邪も引きやすい体質でした。空気の悪い日に咳が出るようになり、咳が出ると西洋の病院へ行き、吸入をしたり西洋の薬を服用したりしていましたが、服用をやめるとまたすぐ咳が出るというのを繰り返していました。 今回は風邪を引いた後の咳が止まらず、当クリニックを受診されました。
診察の結果、Aさんは呼吸器の抵抗力が弱く(肺気虚)アレルギーもあり咽喉が敏感で刺激を受けやすい状態であると施先生は判断しました。
呼吸器の抵抗力が弱い方は、風邪を引きやすく、その後の症状の回復も遅い方が多く見られます。
先生は咳を止める生薬の他に、身体の抵抗力を高める生薬をメインで使用し、炎症やアレルギー症状を抑える生薬を補佐的に使用しました。
先生からは、胃腸に負担がかかるものやお酒、辛いものは控えるように指導がありました。
咳の他に、疲れやすい、身体がだるいなどの症状があり、咳が治まった後もしばらく漢方の服用を続けました。
現在は風邪を引くことは減り、引いてもすぐに治るようになりました。
空気が悪い日は咽喉に痰が少し絡まりますが、咳の発作は出なくなりました。
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- 2017年04月05日
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