「更年期障害」の漢方治療・養生法
【更年期障害の主なタイプ(中医学)】
① 疲れやすく、頭が重くめまいがする
② 情緒が不安定で動悸もする
③ 下半身や末端が冷え、上半身がのぼせる
④ 寝汗をかき、睡眠が浅い
※上記以外にも更年期障害のタイプがあります。実際に症状が出ている方は中医師にご相談ください。
【更年期障害のタイプ別治療法】
① 疲れやすく、頭が重くめまいがする
特徴:胃腸の機能が低下して栄養の吸収が上手くできなくなっているタイプです。エネルギーも血液も足りないので疲れやすく、血液を動かす力も弱くなる
ので血流も悪くなりがちです。このタイプは食欲が無く、下痢をしたり、むくんだり、めまいがしたりすることもあります。
治療:胃腸の働きを改善し、気血を補い、血流を改善する漢方を処方。
養生:×チーズ、アイスクリーム、パンケーキなど。
〇山芋、菊花、クコ、薬用ニンジンなど。
② 情緒が不安定で動悸もする
特徴:「血」が足りなくなり、「心」を滋養できなくなっているタイプです。中医学の「心」は心臓そのものではなく、安心や睡眠とも関係のある臓です。このタイプは何でもないのに悲しくなり涙が出たり、気持ちが落ち着かずにソワソワしたり、眠りが浅く夢を多く見たり、動悸がしたりすることがあります。
治療:血を補い、「心」の機能を安定させる漢方を処方。
養生:×お酒、ドライフルーツ、牛肉など。
〇銀杏、ヘチマ、シイタケ、蓮の実など。
③ 下半身や末端が冷え、上半身がのぼせる
特徴:年齢により身体のすべての機能のベースとなる臓の働きが低下したことにより、身体を温める機能と冷ます機能が乱れているタイプです。冷えのぼせの他にめまいや耳鳴り、足腰のだるさなどを伴うこともあります。
治療:身体のベースアップを図りながら、身体を温める生薬と冷ます生薬を両方処
方して調節。
養生:×冷たい飲食物、揚げ物、バターなど。
〇黒豆、ザクロ、牛肉など。
④ 寝汗をかき、睡眠が浅い
特徴:身体を滋養したり余分な熱を冷ましたり、安静にしたりする機能が低下しているタイプです。このタイプは睡眠の質が悪かったり寝汗をかきやすい他、のぼ
せたり、腰がだるかったり、肌が乾燥しやすかったり、便秘をしたりすることがあります。
治療:身体を滋養しクールダウンさせる陰の性質の生薬を処方
養生:×生姜、唐辛子、カレーなど。
〇竜眼、ユリ根、牡蠣など。
【更年期障害の治療が得意な老中医の診察室】
古川裕三 先生 鄭淑華 先生
Tさんは48歳の女性です。冬に中国に来てから、慣れない環境で疲れと下半身の冷えに悩んでいました。夏になり暑い日が続くと今度は汗をかきやすくなっていました。
そんな中、ある日突然睡眠中にどっと汗をかき、エアコンのついた部屋で下半身が冷たく上半身だけが熱くて汗が止まらなくなりました。Tさんは精神的にも不安になり当クリニックを受診しました。
診察時、先生はTさんの話す様子や顔色をじっと見ながら話を聞きました。Tさんが長期に渡る疲労状態であると先生は判断し、質問をすると、夏になり食欲が無くなり下痢をすることも多く、日中の活動量が激減していることがわかりました。
Tさんの症状を改善するには、まずは胃腸の働きを回復することが大切であると先生は判断し、初回は胃腸に対する生薬をメインに処方をしました。
二回目の診察時にはTさんの食欲が回復していたため、「腎」(腎は中医学では腎臓そのものではなく、身体の働きのベースとなる臓であり生命力や若さ、生殖器系とも関係のある臓であると考えられている)の陰陽を調節し、冷えとのぼせを改善させる生薬を組み合わせて処方しました。そして、自律神経の調節に有効な鍼治療を併用しました。
その後Tさんはだんだんと寝汗が止まり、のぼせる回数も減り、精神状態も安定してきました。二カ月後にはのぼせることも無くなり、疲労感も減り、買い物や掃除もできるようになりました。
さらに三カ月治療を続け、症状が安定しているため治療終了となりました。
※上記の症例のように、漢方と鍼治療を併用することで治療効果が良くなることがあります。詳しくはお問い合わせください。
★保険についてのご質問、漢方ってどうやって飲むの?苦い?
どの先生に診てもらえばいい?などなんでもご質問ください
■バックナンバー
- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2017年07月24日
胃腸の症状に効く!ツボ押し
【中脘(ちゅうかん)】
中脘(ちゅうかん)はおへそから指五本分真上にあり、少しへこんでいます。
胃腸の働きを高めたり、自律神経を整えたりする働きがあり、腹痛や胃の不快感、胃痛、お腹の張り、下痢や嘔吐、疲れ、不眠などに効果的です。
【手三里(てさんり)】
手三里(てさんり)は両方の腕の外側、肘を曲げた時にできる線の先端から骨に沿って指三本分手首側にあります。
肘をつかむようにして親指で刺激をすると良いでしょう。
押すと指先の方までズーンと響く感覚があります。
胃腸の働きを整え、消化を助けたり、食欲不振、下痢、腹痛などを改善させる他、腕の痛みや歯の痛みなどにも効果のあるツボです。
【足三里(あしさんり)】
足三里(あしさんり)は両足のスネにあります。膝の外側でお皿の下から指四本下がった場所で、くぼんでいる所です。
押すと足の先の方までズーンと響く感覚があります。
胃腸の調子を整える働きがあり、食欲不振や下痢や嘔吐、元気がなくだるいときなどに使います。また、膝や足の痛みなどにも効果のあるツボです。
★保険のこと、漢方、鍼灸治療についての疑問、どの先生に診てもらえばいい?などなんでもご質問ください
- つらいときにはこのツボ
- 2017年07月17日
「疲労」の漢方治療・養生法
長い時間寝ているはずなのに疲れが取れない、少し動いただけなのにすぐ疲れる、身体が重だるいなど、西洋医学では治療をすることの少ない「疲労」ですが、中医学では身体の不調として、症状に応じた様々なアプローチ方法があります。
【疲労の主なタイプ(中医学)】
① 暑さで疲れ、全身がだるい
② お酒を飲むことが多く、寝ても朝から疲れている
③ 疲労が溜まり、下痢をしたり風邪を引いたりする
④ 咳が出て疲れている
⑤ 顔色が悪かったり疲れてめまいがしたりする
※上記以外にも疲れのタイプがあります。また、疾患により疲れやだるさが出ている場合もあります。疲れが長引いたり程度がひどい場合は医療機関を受診してください。
【疲労のタイプ別治療・養生法】
① 暑さで疲れ、全身がだるい
特徴:夏の暑さで身体のエネルギーを消耗しているタイプです。身体のだるさ、元気
の無さに加え、身体の熱感や口の渇きなどを伴います。身体に湿がこもってい
ることも多く、その場合は便がゆるくなったり、身体が重たく感じたりしま
す。
治療:身体の熱や湿気を取り除く漢方に食欲を促進する漢方をプラスして処方
養生:×はちみつ、アイスクリーム、パンケーキなど
〇スイカ、緑豆、梅干しなど
② お酒を飲むことが多く、寝ても朝から疲れている
特徴:睡眠の質が悪く身体を十分に回復できていないため朝から疲れているタイプで
す。 お酒を飲んだり脂っこいものや味の濃いものなどを食べたりする機会の多
い人は、身体の中に湿った熱がこもりやすく、そうすると眠りが浅く目を覚ま
しやすくなります。
※睡眠の質が悪い原因は他にもあります。
詳しくは「睡眠障害の漢方治療・養生法」をご覧ください。
治療:余分な熱や湿を排泄し睡眠をコントロールする漢方を処方
養生:×お酒、唐辛子、揚げ物など
〇トウモロコシ、セロリ、ヘチマなど
③ 疲労が溜まり、下痢をしたり風邪を引いたりする
特徴:もともと胃腸の働きがあまり良くない人に多く、疲労や飲食物の不摂生により
胃腸の働きが悪くなるタイプです。食欲が無くなったり、下痢をしたり、身体
が重だるかったり、抵抗力も落ちて風邪も引きやすくなります。
治療:下痢や風邪などを改善する漢方に加えて胃腸を養う漢方を処方
養生:×冷たい飲食物、チョコレートやケーキなど
〇山芋、大葉、蓮の葉など
④ 咳が出て疲れている
特徴:呼吸器の潤いが失われて咳が慢性的に出ており、それにより疲労しているタイ
プです。
咽喉や口が乾燥する他、のぼせたり、寝汗が出たりすることもあります。
治療:呼吸器を潤し炎症を抑えて咳を止める処方と滋養強壮の漢方を組み合わせて処
方
養生:×生姜、大根、カレーなど
〇山芋、ユリ根、蓮の実など
⑤ 顔色が悪かったり疲れてめまいがしたりする
特徴:身体のエネルギーと血液の両方が不足しているタイプです。疲れの他にめま
い、動悸、物忘れ、筋肉がつりやすかったり痺れたりすることがあります。
また、顔色が青白く生理も不順なことが多いです。
治療:身体にエネルギーを与える漢方と血液を与える漢方を組み合わせて処方
養生:×冷たい飲食物、チョコレートやケーキなど
〇レバー、ナツメ、山芋など
【疲労の治療が得意な老中医の診察室】
施紅 先生
Aさんは上海在住の40代の女性です。上海に来て半年が経ち、最初は精力的に活動していましたが、最近は疲れやすく、何もする気が起きず、気が付くと横になって休んでいるということが多くなりました。お腹の調子も悪く下痢をすることが多く、足も冷えてむくんでいる感じがするとのことで来院されました。
施先生はAさんの話をじっくりと聞き、手首の脈を触り、舌の状態を確認しました。手首の脈は強く押し込まないと脈を打っているのがわからず、脈の力もありませんでした。舌の色は赤みが足りず白っぽい色をしており、舌全体もむくんでいました。舌の表面には白い苔がたくさん付いていました。 診察の結果、Aさんは身体の元気の源となる臓である「腎」(西洋医学の腎臓そのものではなく、生命力や免疫、若さなどと関係のある臓器)と消化器系が冷えて働きが悪くなっている状態であると施先生は判断しました。二つの臓は水分代謝とも関係があります。そのため、身体の中に余分な湿気が溜まり、だるくて下痢をしたりむくみを感じているのだと指摘しました。
治療は「腎」と消化器系を温めて働きを高める薬と身体の中の余分な湿気を排泄する漢方薬を服用してもらいました。 同時に施先生はAさんに生活上のアドバイスもしました。身体が冷えているのでシャワーではなく湯船に浸かること、適度な運動をすること、身体を温める食べ物を積極的に食べることを薦めました
Aさんは生活に気を付けながら施先生の処方する漢方薬を飲んだところ、気になっていた症状がだんだんと良くなり、三カ月後にはむくみもすっかり取れ、以前のようにすぐに横になることもなくなり、また精力的に活動されるようになりました。
★保険についてのご質問、漢方ってどうやって飲むの?苦い?
どの先生に診てもらえばいい?などなんでもご質問ください
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2017年07月05日