老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
「不安感」の漢方治療・養生法
不安になることは誰でもありますが、過度の不安を感じたり、不安がずっと続いたりする場合は治療が必要になることがあります。漢方では身体バランスを整えることで不安を和らげていきます。
【不安感の主なタイプ(中医学)】
①不安でよく泣く
②イライラして怒りっぽいのに不安がある
③不安で動悸があり夜も眠れない
④不安なことしか考えられず疲れやすい
※不安のタイプは他にもあります。症状が出てお困りの方は中医師にご相談ください。
【不安感のタイプ別治療法・養生法】
① 不安でよく泣く
特徴:女性に多く、「心」の潤いと血が満たされないことで症状が現れるタイプです。不安と同時に気持ちが焦ったり、すぐに泣きたくなったり、ぼんやりとしたり、眠れなかったり、動悸が出ることもあります。
※「心」とは:中医学の「心」とは西洋医学で言う心臓そのものではありません。心臓の働きの他に、興奮や安心など気持ちのコントロールをする働きもあると定義されており、気持ちが落ち着かなかったり、眠れなかったりするなどは「心」の不調が原因である場合があります。
治療:甘味のある生薬で緊張を緩和し、「心」を養い安心させる生薬を処方。
養生:×唐辛子、わさび、コーヒーなど。
〇麦芽糖、棗など。
② イライラして怒りっぽいのに不安がある
特徴:月経前や子育てのお母さんに多い、気持ちが焦りやすくイライラした後、不安に陥るタイプです。ため息が多かったり、ゆううつな気持ちになったり、胸の脇が張ったりすることもあります。
治療:心身の緊張を緩和し、心が穏やかになる生薬を処方。
養生:×四川料理、羊肉、アイスクリームなど。
〇アーモンド、牛蒡、コーヒーなど。
③ 不安で動悸を感じ眠れない
特徴:陰陽のバランスが悪く、一日のリズムが乱れているタイプです。気持ちが落ち着かず、気が焦ったり、動悸がしたり、不眠になったりすることもあります。
※「陰陽」とは:ものの性質を二つに分けた時に、活動性が高い、温度が高い、明るいなどの性質があるものを「陽」に分類し、活動性が少ない、温度が低い、暗いなどに分類されるものを「陰」に分類します。
身体の「陰」が足りなくなると心身を安静に保つことができなくなり、不調として症状が現れます。
治療:身体を落ち着かせる陰の成分を補い、不安な心を安定させる生薬を処方。
養生:×冷えたビール、辛い物、玉ねぎなど。
〇銀杏、オイスター、スッポンなど。
④ 不安なことしか考えられず、疲れやすい
特徴:胃腸の働きが悪く、栄養分を吸収できないので気と血が不足し、「心」が満たされなくなって、不安になるタイプです。泣きたくなったり、ビクビクしたりする他、疲れやすく元気がないことが特徴で、食欲が無かったり、お腹の調子が悪かったりすることがあります。
治療:胃腸の働きを改善し食欲を調節する、また「心」に血を補う生薬を処方。
養生:×大根、苦瓜、生魚など
〇竜眼、グリッシーニ、ウコンなど
【「不安感」の治療が得意な老中医の診察室】
芦田 明日香 先生
Aさんは上海に住む40代後半の女性です。最近、特に理由はないのに漠然とした不安があり、睡眠の状態も悪いとのことで受診をされました。
芦田先生はAさんの話を良く聞き、質問をしていきました。すると、Aさんは不安の他にイライラしたり泣けてきたりと情緒が不安定で、寝つきが悪く、寝たと思えば悪夢を見るので、朝起きた時にすっきりせず、疲労感が残っていることがわかりました。また、月経の周期も不安定になっていました。手首の脈を触ると、ギターの弦をはじくような緊張した脈をしていました。
診察の結果、Aさんは真面目で神経質な性格をしており、物事をあれこれ考えるタイプで、ストレスを受けやすい状態である上に、更年期障害が加わってホルモンバランスも乱れ、症状が悪化していると芦田先生は判断しました。
Aさんには心身の緊張を緩和し、胃腸を整える生薬を中心に、血を補いホルモンバランスを整える生薬を組み合わせて服用してもらうことになりました。同時に、自分の思考パターンを知り、その思考にはまり込まないように、思考をストップして穏やかな時間を持つことをアドバイスしました。また、適度な運動や日光浴、規則正しい生活を送ることも大事であると話しました。
Aさんが漢方を服用しながらアドバイスに従い生活をすると、一カ月後には寝つきが良くなり、悪夢を見ることが無くなりました。同時に疲労感も薄れて行き、三カ月後には不安になったり情緒が不安定になったりすることもなくなり、治療終了となりました。
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2017年11月14日