老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜

「スマホ病」の治療法

スマートフォンを長時間利用していると様々な不調が出てきやすくなります。現代病でもある「スマホ病」の中で理学治療が効果的な症状について解説します。

 

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【スマホ病の主なタイプ】 

 

①首の痛みがある

 

②肩こりや腕の痺れがひどい

 

③目が充血して疲れやすい

 

④手や腕が痛む、小指の変形もある

 

※スマートフォンを操作して起きる不調は他にもあります。実際に症状が出ている方は医師にご相談ください。

 

 

【スマホ病のタイプ別治療法】

 

① 首の痛みがある

 

特徴:首の前屈状態が続き、筋肉群が疲労して痛む状態です。椎間板の負担が増え、痛むことも。

 

治療方法: 理学治療で筋肉の緊張を和らげ、血流を改善し痛みを軽減させる。肩や首のストレッチも指導。

 

 

② 肩こりや腕の痺れがひどい

 

特徴:スマートフォンに長時間集中することで肩甲骨が前傾して肩に痛みが現れている状態です。

 

治療方法:理学治療で肩甲骨周りの筋肉群の緊張を和らげる。肩甲骨を動かす方法と、首の緊張を和らげる腕のストレッチも指導。

 

 

③目が充血して疲れやすい

 

特徴:ドライアイになったり目が疲れている状態です。首のコリなどで血流が悪くなり目が疲れることも。

 

治療方法:理学治療で目の周囲や頭部、首の筋肉をマッサージし、疲労を緩和する。マッサージ方法も指導。

 

 

④手や腕が痛む、小指の変形もある

 

特徴:特徴スマートフォンを長時間持つことで痛みが出ている状態です。また、慢性的に小指に乗せて操作することで変形する場合も。

 

治療方法:理学治療で腕や肘の筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減させ、指の矯正と変形予防をする。マッサージ方法も指導。 

 

 

【首、肩の治療が得意な理学療法士の治療室】

 

Matthew Stevens (マシュー)先生(理学療法士)

 

Dr

 

Aさんは上海在住の30代の女性です。二カ月ほど前から首の痛みに悩まされており、特に重いものを持つと痛みが増すとのことで来院されました。

 

マシュー先生はまずAさんの話を聞き、次に身体のチェックをしていきました。首から腰にかけての骨の状態を触って確認をし、左右の足の長さをチェックしました。特に骨盤の状態を念入りに確認し、その後筋力をチェックしていきました。マシュー先生はAさんの手や腕に手を添えて、Aさんに押してもらったり、腕や足を上げてもらったりして、左右の筋力のバランスを確認しました。その後関節の過度域を確認して一通りのチェックが終わると、Aさんの首の痛みは腰が原因で起きているとマシュー先生は言いました。

骨盤の位置のずれが身体のバランスを崩して腰以外に痛みを起こすことは少なくないそうで、Aさんの場合も、レントゲンの結果を見ても首の骨には問題がなく、背中全体が緊張していました。マシュー先生は図を示しながらAさんの状態の説明をして、治療計画を話してから実際の治療を始めていきました。

 

治療はまず緊張した筋肉をほぐし、その後、骨の位置を調整しました。日常生活では、首をグルグル回すストレッチをしないことと、弾力性のある枕を使うように、とのアドバイスがありました。肩や首に違和感のある方の多くが首をグルグル回すストレッチをしているけれども、実はそれは首に負担がかかるので、首のストレッチをする時は、前後左右の一方向ずつ倒すことと、痛いほど倒すと炎症を悪化させる恐れがあるので、痛くない範囲で繰り返し行うことが大切である、とマシュー先生は話しました。

 

Aさんは二カ月ほどマシュー先生の治療に通いました。現在痛みがほとんど無くなったため、次回から運動療法に切り替えることをマシュー先生は検討しています。痛みが出ている場所だけではなく、身体全体のバランスを整える必要があるため、全身のエクササイズを提案する予定です。

 

 


 

 

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■バックナンバー

 

「不安感」の漢方治療・養生法

 

「インフルエンザ」の漢方治療・養生法

 

「便秘」の漢方治療・養生法

 

「更年期障害」の漢方治療・養生法

 

「疲労」の漢方治療・養生法

 

「四十肩・五十肩」の治療法

 

「腰痛」の治療法  Part2

 

「咳・喘息」の漢方治療・養生法

 

「めまい」の漢方治療・養生法

 

「首肩の痛み」の鍼灸治療・養生法

 

「乾燥肌」の漢方治療・養生法 

 

「風邪&咳」の漢方治療・養生法

 

「冷え性」の漢方治療・養生法

 

「睡眠障害」の漢方治療・養生法

 

「生理痛」の漢方治療・養生法

 

「アトピー」の漢方治療・養生法

 

「生活習慣病」の予防・養生法

 

「繰り返す下痢」の漢方治療・養生法

 

「むくみ」の漢方治療・養生法

 

「腰痛」の漢方治療・養生法

 

「慢性鼻炎」の漢方治療・養生法

 

「胃痛」の漢方治療・養生法

 

「不妊症」の漢方治療・養生法

 

「長引く咳」の漢方治療・養生法

 

「不安感」の漢方治療・養生法

不安になることは誰でもありますが、過度の不安を感じたり、不安がずっと続いたりする場合は治療が必要になることがあります。漢方では身体バランスを整えることで不安を和らげていきます。

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【不安感の主なタイプ(中医学)】

 

①不安でよく泣く

 

②イライラして怒りっぽいのに不安がある

 

③不安で動悸があり夜も眠れない

 

④不安なことしか考えられず疲れやすい

 

※不安のタイプは他にもあります。症状が出てお困りの方は中医師にご相談ください。

 

 

【不安感のタイプ別治療法・養生法】

 

① 不安でよく泣く

 

特徴:女性に多く、「心」の潤いと血が満たされないことで症状が現れるタイプです。不安と同時に気持ちが焦ったり、すぐに泣きたくなったり、ぼんやりとしたり、眠れなかったり、動悸が出ることもあります。

 

※「心」とは:中医学の「心」とは西洋医学で言う心臓そのものではありません。心臓の働きの他に、興奮や安心など気持ちのコントロールをする働きもあると定義されており、気持ちが落ち着かなかったり、眠れなかったりするなどは「心」の不調が原因である場合があります。

 

治療:甘味のある生薬で緊張を緩和し、「心」を養い安心させる生薬を処方。

 

養生:×唐辛子、わさび、コーヒーなど。
麦芽糖、棗など。

 

 

② イライラして怒りっぽいのに不安がある

 

特徴:月経前や子育てのお母さんに多い、気持ちが焦りやすくイライラした後、不安に陥るタイプです。ため息が多かったり、ゆううつな気持ちになったり、胸の脇が張ったりすることもあります。

 

治療:心身の緊張を緩和し、心が穏やかになる生薬を処方。

 

養生:×四川料理、羊肉、アイスクリームなど。
アーモンド、牛蒡、コーヒーなど。

 

 

③ 不安で動悸を感じ眠れない

 

特徴:陰陽のバランスが悪く、一日のリズムが乱れているタイプです。気持ちが落ち着かず、気が焦ったり、動悸がしたり、不眠になったりすることもあります。

 

※「陰陽」とは:ものの性質を二つに分けた時に、活動性が高い、温度が高い、明るいなどの性質があるものを「陽」に分類し、活動性が少ない、温度が低い、暗いなどに分類されるものを「陰」に分類します。
身体の「陰」が足りなくなると心身を安静に保つことができなくなり、不調として症状が現れます。

 

治療:身体を落ち着かせる陰の成分を補い、不安な心を安定させる生薬を処方。

 

養生:×冷えたビール、辛い物、玉ねぎなど。

銀杏、オイスター、スッポンなど。

 

 

④  不安なことしか考えられず、疲れやすい

 

特徴:胃腸の働きが悪く、栄養分を吸収できないので気と血が不足し、「心」が満たされなくなって、不安になるタイプです。泣きたくなったり、ビクビクしたりする他、疲れやすく元気がないことが特徴で、食欲が無かったり、お腹の調子が悪かったりすることがあります。

 

治療:胃腸の働きを改善し食欲を調節する、また「心」に血を補う生薬を処方。

 

養生:×大根、苦瓜、生魚など
竜眼、グリッシーニ、ウコンなど

 

 

【「不安感」の治療が得意な老中医の診察室】

 

芦田 明日香 先生

 

Dr

 

Aさんは上海に住む40代後半の女性です。最近、特に理由はないのに漠然とした不安があり、睡眠の状態も悪いとのことで受診をされました。

 

芦田先生はAさんの話を良く聞き、質問をしていきました。すると、Aさんは不安の他にイライラしたり泣けてきたりと情緒が不安定で、寝つきが悪く、寝たと思えば悪夢を見るので、朝起きた時にすっきりせず、疲労感が残っていることがわかりました。また、月経の周期も不安定になっていました。手首の脈を触ると、ギターの弦をはじくような緊張した脈をしていました。

 

診察の結果、Aさんは真面目で神経質な性格をしており、物事をあれこれ考えるタイプで、ストレスを受けやすい状態である上に、更年期障害が加わってホルモンバランスも乱れ、症状が悪化していると芦田先生は判断しました。

 

Aさんには心身の緊張を緩和し、胃腸を整える生薬を中心に、血を補いホルモンバランスを整える生薬を組み合わせて服用してもらうことになりました。同時に、自分の思考パターンを知り、その思考にはまり込まないように、思考をストップして穏やかな時間を持つことをアドバイスしました。また、適度な運動や日光浴、規則正しい生活を送ることも大事であると話しました。

 

Aさんが漢方を服用しながらアドバイスに従い生活をすると、一カ月後には寝つきが良くなり、悪夢を見ることが無くなりました。同時に疲労感も薄れて行き、三カ月後には不安になったり情緒が不安定になったりすることもなくなり、治療終了となりました。

 

 


 

 

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「長引く咳」の漢方治療・養生法

 

「インフルエンザ」の漢方治療・養生法

毎年流行するインフルエンザ、漢方でウィルスに対する身体の抵抗力をつけて予防をしたり、もともとの体質やインフルエンザの症状に合わせて漢方治療をすることで症状を軽くしたりすることができます。

インフルエンザイラスト

 

【インフルエンザに感染する人の主なタイプ(中医学)】

 

① 毎年のようにインフルエンザに感染する

 

② 発熱悪寒が激しく汗が出ない

 

③ 感染後、胃腸症状が出やすくなる

 

④ 冷えてくるとインフルエンザに感染する

 

※上記以外にもインフルエンザに感染する人のタイプがあります。よくインフルエンザに感染する方、実際に感染している方は中医師にご相談ください。

 

 

【タイプ別漢方治療・養生法】

 

① 毎年のようにインフルエンザに感染する

 

特徴:身体の抵抗力が弱く、皮膚、鼻、咽喉などから病原体が入り込みやすいタイプです。インフルエンザだけではなく、風邪もよく引きやすく、なかなか治らない傾向にあります。このタイプの方は疲れやすく、少し動くとすぐに息切れする方が多いです。

 

治療:感染する前に抵抗力を養い、抗ウィルス作用のある生薬を処方また鍼やお灸で養生をする

 

養生:×睡眠不足、疲労、偏食など。

   山芋、薬用人参、蓮の実など。

 

 

② 発熱悪寒が激しく汗が出ない

 

特徴:インフルエンザに感染したばかりの初期によくある症状で、汗が出ないために熱が下がらない状態です。発熱し赤い顔をして口が乾くタイプの方には強力に汗をかかせ、発熱しているのに本人は寒がり青白い顔をしているタイプの方には身体の芯から温めて汗をかかせて治療をします。

 

治療:身体を温めて汗を出す生薬を処方

 

養生:×入浴、冷えた水、風に当たるなど。

   ミント、白湯、生姜など。

 

 

③ 感染後、胃腸症状が出やすくなる

 

特徴:インフルエンザに感染をした際に、呼吸器の症状の他に、食欲が無くなったり吐気がしたり、下痢をしたりしやすいタイプです。感染時に胃腸の働きが乱れてしまった人の他、もともと胃腸の働きが弱く免疫力が低下している「脾虚」のタイプは消化器系の症状が出やすくなります。

 

治療:胃腸の働きを改善し身体を強くする、抗ウィルス作用のある生薬の処方。

 

養生:×冷えたビール、辛い物、揚げ物など。   
   銀杏、ハトムギ、スベリヒユなど。

 

 

④ 冷えてくると感染しやすくなる

 

特徴:身体が冷えやすい体質の方に多く、冷えにより抵抗力が下がり病原体が侵入しやすくなるタイプです。特に疲れている時には感染しやすい傾向にあります。

 

治療:冬になる前に、身体を温め、病原体が侵入しにくい体質にする生薬を処方。

 

養生:×薄着、生サラダ、生魚など。   
   生姜、羊肉、ホットワインなど。

 

 

【インフルエンザの治療が得意な老中医の診察室】

 

古川  裕三 先生

 

古川裕三

 

Sさんは45歳の女性です。初診の際はインフルエンザではなく、上海に来てから生理前に情緒が不安定になるとのことで来院されました。

古川先生はまずSさんの話を聞きながら、心情を観察しました。Sさんは悲しい様子で、声も詰まる感じで力がありませんでした。時折自分の不甲斐なさにクヨクヨしたり、夜、不安になると眠れず、日中も元気が出ず気持ちも落ち込んだりしてしまうとのことでした。

 

次に、古川先生は質問をしながら手首の脈を触りました。Sさんの脈は細くて緊張していました。咽喉を見て、咽喉に異物感があることがわかりました。舌を見ると、赤い舌をしており、表面には薄い苔がついていました。また、Sさんは体力がなく、上海に来てから毎年インフルエンザに感染することがわかりました。

 

もともと体力が無く心と身体の抵抗力が弱いSさんは、生理前になると情緒が乱れやすくなり、また、咽喉に痰と熱がたまりやすくウィルスに対する抵抗力が弱いためインフルエンザにも感染しやすいのだと古川先生は判断しました。

古川先生はまず、今起きている情緒不安と咽喉の異物感の症状を落ち着かせるための漢方処方を出し、感染症を起こす前に抗ウィルス作用のある生薬を配合しました。

 

一週間後、Sさんの咽喉の異物感が軽減され、情緒、睡眠とも安定してきました。古川先生は生理前の情緒不安を改善する漢方の処方を少し調整してさらに二週間治療を続けました。

二週間後、生理が始まりましたが、悲しくなるなどの情緒不安も軽減されました。その後、生理の周期に合わせて調合を少しずつ変え、免疫力を調節する薬用人参や抗ウィルス作用の生薬も加えながら三か月間服用してもらいました。すると、食欲も出てきて、夜も眠れるようになり、日中の気力も出てきました。

そして、インフルエンザ流行の時期になり、ご主人やお子さんたちは感染しましたが、漢方薬を服用していたSさんは感染することなく流行期間を乗り切ることができました。

 

 


 

 

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