老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
「のぼせ・更年期障害」の治療法
女性は閉経をはさんだ10年前後にホルモンバランスに変化がおこり、心身に様々な不調があらわれる方がいらっしゃいます。生活に少なくない影響を及ぼす一方で、ホルモン以外にストレスなどの要因が関連していることもあり、包括的な診察が必要です。
【のぼせ・更年期障害の主な症状】
①更年期の、のぼせがひどく、汗が止まらない
②イライラや気分の落ち込みがひどくなった
③夜の寝汗がひどく、寝起きがつらい
④冷えのぼせがあり、疲労倦怠感もある
⑤ストレスや悩みがあると、のぼせがひどくなる
※他にものぼせ・更年期障害の症状は多くあります。実際に症状のある方は中医師にご相談ください。
【のぼせ・更年期障害の症状別治療法】
①汗が出やすく寝汗もある
特徴:身体をクールにする機能(陰)が減少しているので汗のコントロールができない、睡眠不足になるタイプ。
治療:鍼治療で自律神経の調節し、生薬で陰を補い、汗をコントロールする生薬を処方。
養生:×ニラ、牛肉、ポテトチップ
〇ユリ根、梨、スッポンなど
②気分の浮き沈みが激しい
特徴:ホルモンの変動により情緒が乱れ、気と血のバランスが悪くなるタイプ。身体の虚弱な人などになりやすい。
治療:気血を補い身体に栄養を満たし、精神を安定させる生薬の処方。健康的な生活リズムへの改善指導。
養生:×甘いお菓子、激辛料理、お酒
〇竜眼、牡蠣、ナツメなど
③ストレスや緊張でのぼせがひどくなる
特徴:心と身体の(自律神経とホルモン)のバランスが乱れ、それに対応できない状態。過度のストレスの人にも起こりやすいタイプ
治療:身体を落ち着かせる「血」を補い、心と身体を調節する生薬の処方。
養生: ×ニンニク、タバコ、羊肉
〇ミント、カレー、苦瓜など
④冷えのぼせに倦怠感
特徴:夏バテなどで食欲が低下してしまい、免疫力も低下しているタイプ。気が不足している人に多くみられる。
治療:胃腸の働きを改善し食欲を調節する。また気を補い陰陽の調節の生薬を処方。
養生: ×冷えたドリンク、ケーキ、生魚
〇トウモロコシ、薬用人参、黄精餅など
【のぼせてきた時はこのツボをマッサージ!】
※内くるぶしの一番高い所から上へ指4本分上がった所の、太い骨のすぐ横のところを親指で100~200回、優しくマッサージしましょう。
【のぼせ・更年期障害の治療が得意な老中医の診察室】
劉 愛武範先生
Aさんは上海に住む49歳の女性です。
半年前からのぼせ、ほてりが気になり始めました。日夜を問わず異常な発汗(とくに頭部と顔に多い)があり、ときどき頭痛にも悩まされるようになりました。また気分的にも浮き沈みが激しく、落ち込んだりイライラしたりを繰り返しています。寝つきも悪くなり、全身に疲労感もあります。生理も周期が不安定になり、最近は3、4か月に一度の頻度になっています。
劉先生はAさんの話を丁寧に聞き、診断を行いました。Aさんは腎臓の働きが弱まり精気に影響が出ていること、またストレスによって肝臓にも影響があり、気の流れが滞っていると判断されました。
治療には漢方薬を主に使用することになりました。腎臓の陰の気を補い、肝臓の熱をとって気の巡りをよくする生薬を処方したほか、睡眠改善のための安神効果のある生薬を処方しました。
治療開始1週間後、異常な汗に改善が見られ始めました。
治療開始1か月後、緊張するとまだ汗が出ますが、平常時は正常な状態になりました。頭痛の発生回数も減少しています。
治療開始2か月後、頭痛はほぼなくなりました。寝つきもよくなり、気分も安定しています。
治療開始3か月後、まだ気分が不安定な時が多少ありますが、汗は改善され、頭痛はなくなりました。睡眠も改善されています。また全身疲労感も感じられなくなりました。
生理不順については、年齢的に閉経が近いことから、これが自然な状態とも考えられるため、様子を見ることにしようと相談して決めました。
なお、治療期間においては漢方のほか、鍼治療(女性ホルモンバランスの調整、ストレス軽減、全身リラックス)や、カウンセリング(不安定な自分との付き合い方の指導)もあわせて実施しました。
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2018年06月30日