老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
~「手足の冷え」の治療法~
上海は湿気も高く冬の寒さが身に染みるようだ、と感じる方も少なくありません。季節的なもの、体質的なものだとあきらめている方、中医学を試してみませんか?
【手足の冷えの主な症状】
①手や足の指だけが冷える
②肩、首、背中が冷える
③お腹と腰が冷える
④肘や膝まで冷える
⑤下半身だけ冷える
※他にも手足の冷えの症状は多くあります。実際に症状のある方は中医師にご相談ください。
【手足の冷えの症状別治療法】
①手や足の指だけが冷える
特徴:神経質で真面目な人や、緊張やストレスのある人に多い症状。
治療:緊張をやわらげ、血を補い血の流れを良くする生薬の処方。
養生:×唐辛子、砂糖菓子、タバコなど
〇ミント、ウコン、ローズマリーなど
②肩、首、背中が冷える
特徴:身体の姿勢が悪く、咳や喘息などの症状がある人が起きやすい症状。
治療:上半身のストレッチ、身体を温め肺の血流を良くする漢方を処方。
養生:×水芹、糖菓子、揚げ物など
〇クルミ、梅干し、泥鰌(ドジョウ)、お灸など
③お腹と腰が冷える
特徴:運動不足で筋力がない人、夏に身体を冷やし過ぎた人、不妊症の方にも多い症状。
治療:身体の中心を温め、身体全体に血が巡らせる漢方を処方。
養生: ×タイカレー、生の果物、ジェラートなど
〇シナモン、羊肉、サヤインゲン、など
④下半身だけ冷える
特徴:更年期や下半身に浮腫みがある人に多い症状。
治療:ホルモンを補う生薬や、浮腫みを改善する漢方を処方。
養生: ×チーズケーキ、お酒、寝不足など
〇黒豆、ザクロ、ニラなど
★風邪予防にここをマッサージしよう!★
陽池(ヨウチ)
※手の甲側、手首の中央より小指側の窪みの部分を100~200回、マッサージしましょう。 (当院ではマッサージ方法を指導いたします)
【手足の冷えの治療が得意な老中医の診察室】
施 建芳 先生
Aさんは上海に住む36歳の女性です。
手足の冷えが5年続いています。最近天気が寒くなるにつれ症状が重くなり、特に夜中に冷えが強いためよく眠ることができません。そのほか軟便状の排便が増える、お腹が冷えるように痛いという症状がみられるといいます。普段冷えた水やビールを飲む習慣があり、生理痛も見られます。
血液検査、尿検査、弁検査ともに異常は見られませんでした。足の血管に関してレントゲンを撮りましたがこちらも異常はありません。
施先生はさらに詳しい状態を観察します。舌は淡く、白い苔が目立ちます。脈は細い状態でした。これらの状態や患者の生活習慣から、「脾」と「胃」にダメージがあり、「脾陽」の機能が低下したことから排便にも影響が出ていると判断しました。また、中医学では「脾」は筋肉や手足の働きにかかわっていると考えますので、同様に「脾陽」の機能低下が手足の冷えにつながっているといえます。
施先生は附子理中汤という漢方をベースに患者に合わせて処方しました。2週間後手足の冷えは改善され、睡眠も良好となりました。また毎晩足湯をし、食生活も「脾」と「胃」を温める食材をとるようにしました。顔色もよくなり、乾燥肌もつややかになりました。
★保険についてのご質問、漢方ってどうやって飲むの?苦い?
どの先生に診てもらえばいい?などなんでもご質問ください
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2019年01月29日
~「インフルエンザ」の治療法~
冬になると心配なのがご家族の風邪。とくにお子様の場合はふとした油断から発病、悪化することもあります。様々なタイプごとにインフルエンザや風邪を解決しましょう。
【インフルエンザの主な症状】
①インフルエンザ流行時に必ずうつる
②冬になると風邪をひく
③風邪をひくと、咳が治りにくい
④風邪を引いたり直ったりを繰り返す
⑤環境の変化があると風邪をひく
※他にもインフルエンザの症状は多くあります。実際に症状のある方は中医師にご相談ください。
【インフルエンザの症状別治療法】
①インフルエンザ流行時に必ずうつる
特徴:日頃から少食で、胃腸の働きが弱い子や、ストレスが多く緊張している人は、身体の気(抵抗力)がなくなり、インフルエンザに感染しやすくなります。
治療:「気」を補う生薬で抵抗力を上げ、抗ウイルス生薬を処方。ストレスが多い人には、心と身体を調節する生薬の処方。食事指導も同時に実施。
養生:×ラーメン、アイスクリーム、お菓子
〇菊茶、ミカン、あずきなど
②冬になると風邪をひく
特徴:上海の気温の落差が激しく、身体が対応できないタイプ。
治療:体温調節能力を調節する生薬の処方。汗腺のコントロールのための運動指導。
養生:×コーヒー、冷えたドリンク、唐辛子
〇梅干し、生姜、ナツメなど
③風邪をひくと咳が治りにくい
特徴:お酒や甘いデザートが好きな方で、身体に老廃物が溜まりやすい方に多い症状。 風邪を引いた際、その影響で痰が出やすく、咳が止まらなくなります。
治療:身体の老廃物を排泄させるデトックス生薬と、咳を止める生薬の処方。飲酒量の調整などの食事指導。
養生: ×お酒、紅炒肉、生クリームなど
〇セロリ、ルッコラ、キャベツなど
④風邪を引いたり直ったりを繰り返す
特徴:睡眠不足、ストレスや過度の疲労により、抵抗力がない状態の人に多くみられる症状。
治療:睡眠の質を高める生薬や、薬用ニンジンなど体力を補いストレスを改善する生薬を処方。
養生: ×唐辛子、こんにゃく、フライドポテト
〇山芋、竜眼、アサリなど
★風邪予防にここをマッサージしよう!★
合谷(ゴウコク)
※親指で一番膨らんだところをマッサージしましょう。親指で100~200回、優しくマッサージしましょう。
【インフルエンザ、風邪の治療が得意な老中医の診察室】
王 正中先生
Aさんは上海に住む43歳の男性です。
のどの痛みが5日間続いています。咳が出ており、ややタンが絡みます。のどの渇きも感じています。鼻水鼻づまりはなく、大便も一日に一度ありますが、やや軟便です。食欲に問題はありません。
王先生はさらに詳しい状態を観察します。舌は赤色で、ややうすい苔があります。脈は浮いている状態でした。このことから、風邪(ふうじゃ)によって侵され、上半身の調子を妨げていると診断しました。治療にはそれらに応じた漢方を処方しました。
痰が絡む咳が出ると病院を訪れました。夜になると突然発作的に咳が出て眠れなくなるそうです。咳は5分くらい継続し、胸が痛く息苦しくなるそうです。また、漢方を服用する際には生姜を少々加えてたくさん白湯を飲むように指導しました。発汗による風邪(ふうじゃ)の発散を期待しての指導です。
1週間後、のどの痛み、咳、寒気は改善されました。風風(ふうじゃ)が取り除かれた状態でしたが、さらなる改善を目指してもう7日分の漢方を新たに処方しました。
★保険についてのご質問、漢方ってどうやって飲むの?苦い?
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2018年11月30日
~「咳・喘息」の治療法~
空気の乾燥する冬は咳や喘息が発生しづらい季節です。でも「乾燥した空気」「冬」以外にも咳と喘息を引き起こす原因があるのです。
様々なタイプごとに咳・喘息を解決しましょう。
【咳・喘息の主な症状】
①冷たい空気に触れると咳が出る
②風邪をひいた後、ずっと咳だけが治らない
③タバコを吸うと苦しくて、咳が止まらない
④甘い物を食べると、喉に痰が詰まり息苦しくなる
⑤横になると、咳が激しく眠れない
※他にも咳・喘息の症状は多くあります。実際に症状のある方は中医師にご相談ください。
【咳・喘息の症状別治療法】
①冷たい空気に触れると咳が出る
特徴:身体を防衛する力が弱く、季節の変化に身体が対応できないタイプ。
治療:身体を温め血の循環を良くし、腎を養い免疫をコントロールする生薬を処方。
養生:×柑橘類、アイスクリーム、疲労など
〇梅干し、ブルーベリー、シナモンなど
②風邪をひいた後、ずっと咳だけが治らない
特徴:体力がない為、ウイルスや細菌を完全に駆除できない、気血が足りないタイプ。
治療:胃腸をコントロールし衛気を養い、病原体を減らす解毒の生薬を処方。
養生:×生魚、エビやカニ、鶏のから揚げなど
〇ミント、大根、牛蒡など
③甘い物を食べると痰が詰まり息苦しくなる
特徴:甘い物を好んで食べる人に多く、咽喉に痰が溜まり、ウイルスや細菌が住みやすくなるタイプ。
治療:胃腸を活発に動かす生薬と、痰を排泄し解毒する生薬を処方。
養生: ×菓子パン、マシュマロ、チーズケーキなど
〇セロリ、ルッコラ、キャベツなど
④横になると、咳が激しく眠れない
特徴:病原体が多く肺の気(機能)が乱れているタイプ、身体がむくみやすい人に良くみられる。
治療:病原体を駆除する解毒の生薬と、の機能を助ける生薬を処方。
養生: ×お酒、羊肉、コーヒーなど
〇銀杏、杏仁、ユリ根など
★咳が止まらない時はここをマッサージしよう!★
列缺(レッケツ)
※左右の親指を交差し、人差し指の先が当たる所で、脈のふれてない所をやさしく100~200回、マッサージしましょう。
【咳・喘息の治療が得意な老中医の診察室】
古川 裕三先生
Aさんは上海に住む48歳の女性です。
痰が絡む咳が出ると病院を訪れました。夜になると突然発作的に咳が出て眠れなくなるそうです。咳は5分くらい継続し、胸が痛く息苦しくなるそうです。
以前、患者は冷えたビールを飲むことが多く、エアコンの効いた部屋で体を冷やしてしまい、その後喉の痛み、寒気などの風邪のような症状が現れたそうです。西洋医のクリニックで総合感冒薬を処方され、熱や喉の痛み、関節痛に改善が見られました。しかしその後咳が出始め、夜には発作的な連続する咳が出るようになりました。咳止めを2週間服用しても改善が見られないため、当クリニックを受診されました。
古川先生はさらに患者の詳しい状態を聞き出します。痰は白く粘り気がある、鼻水が喉に流れる、喉が痒くて渇くことがわかりました。舌は赤く、白い苔が見られます。 風邪(ふうじゃ)がまだ抜けきっておらず、身体に痰の熱がこもっていることから、「肺」の機能が損なわれていると診断しました。治療にはそれらに応じた漢方を処方しました。 また西洋医学的な検査からマイコプラズマ抗体が陽性とわかりました。体力回復のために規則正しい食生活、睡眠時間の確保、飲酒と喫煙は咳を誘発するために制限するようアドバイスを行いました。
1週間後、睡眠時の咳が減り、睡眠の質が改善されるようになりました。痰の色も白から透明に変わりました。鼻水はなくなり、喉のかゆみだけが残っています。お話をすると咳が出やすい状態だそうです。食欲もあり、体力が回復しています。 さらに同じ処方を1週間服用いただいた結果、咳がおさまり、治療終了となりました。
★保険についてのご質問、漢方ってどうやって飲むの?苦い?
どの先生に診てもらえばいい?などなんでもご質問ください
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- 老中医の診察室〜症状別漢方治療・養生法〜
- 2018年10月31日
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